%#BIBTEX pbibtex -kanji=%k reroad-paper %#!platex -kanji=%k %#DVIPDF dvipdfmx -p b5 % (save-excursion (replace-string "," ",") (goto-line 10) (replace-string "." "。")) \documentclass[a5j,10pt]{jsarticle} %% 共通マクロの定義 %% Silk-Re:road → \sr とする。本文中ではつねに \sr で参照すること。 \newcommand{\sr}{{\itshape Silk-Re:road}} %% 参考文献の足し方 %% 1. storymap.bib を開く %% 2. cinii などで探す %% 3. 「LaTeX/BibTeX で引用」で出てくるのを一旦 storymap.bit にコピー %% 4. そのままでは英語風になるので周りの書式に合わせて修正する %% 5. ラベル(括弧内の最初のキーワード)も分かりやすいのにする %% 6. 本文中で \cite{ラベル} で引用する。} \renewcommand{\baselinestretch}{1.06} \setlength{\textheight}{18cm} \addtolength{\topmargin}{-1cm} % 紙上端1インチからのマージン \addtolength{\oddsidemargin}{0cm} \addtolength{\evensidemargin}{0cm} \addtolength{\textwidth}{1zw} \setlength{\itemsep}{0.5ex} \title{%位置とリンクした 体験獲得型地域文化\\ デジタルアーカイブシステムの構築} \author{広瀬雄二\thanks{東北公益文科大学 yuuji@koeki-u.ac.jp}~ 山名流聖\thanks{c118227@f.koeki-u.ac.jp (\ref{by-ryusei},\ref{by-ryusei2})}~ 吉野凌太\thanks{c118236@f.koeki-u.ac.jp (\ref{by-yoshino})}~ 櫻井風雅\thanks{c119094@g.koeki-u.ac.jp (\ref{outline-sr},\ref{respdesign})} } \date {} \usepackage{url} % required for `\url' (yatex added) \pagestyle{empty} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} % required for `\includegraphics' (yatex added) %\usepackage{eclbkbox} % required for `\breakbox' (yatex added) \usepackage{okumacro} % required for `\ruby' (yatex added) \usepackage{subfigure} % required for `\subfigure' (yatex added) \usepackage{ascmac} % required for `\itembox' (yatex added) \usepackage{wrapfig} % required for `\wrapfigure' (yatex added) \begin{document} \maketitle \begin{abstract} 東北公益文科大学ではこれまで,地域が保有する歴史的建造物・物品や未来に 残したい景観などをデジタル化し,電子地図上に配置して地域との関連を一瞥 で判別可能とするシステムを開発してきた。その中で,空中からの俯瞰写真を 連動させて視覚的に画像を提示する機構を構築したが,本研究ではそれを歴史 的な広がりを持ったものに拡張し,文化的建造物の周辺での移動と時間軸の移 動を対応付け,閲覧者の身体的アクションにより文化的施設に関する 情報が得られるようなシステムについて提案する。 \vspace*{2ex} \begin{center} {\bfseries Summary} \end{center} This paper propses a Web-based map systems for regional convenisions and memories that can be operated by the geographical motion of users. Furthermore, it transfers the ``message'' to visitors from the dweller of the region as well as digital archive of historical materials. \end{abstract} % \vspace*{1em} % %\begin{abstract} % % 和文要旨 %\end{abstract} %\renewcommand{\abstractname}{\textbf{Abstract}} %\begin{abstract} % % ABSTRACT in English %\end{abstract} %%\end{titlepage} \begin{description} \item[キーワード:] デジタルアーカイブ, 地域文化,データベース,WebGIS \item[Keywords:] Digital Archiving System, Folklore Preservation, Database, WebGIS, HTML5, GeoLocation, WebVR, Gamification \end{description} \section{はじめに} 東北公益文科大学(以下本学)では,平成29(2017)年度私立大学研究ブラ ンディング事業での取り組みを皮切りに,地域が保有する歴史的建造物・ 物品や失われやすい景観や伝統的な舞などの「動き」をデジタル化し, 後世に残すための取り組みを進めてきた。 それらのうち,筆者らはデジタルアーカイブを電子的なWeb地図の上に 掲載し,表現項目がどの地域のものなのかを一瞥で判別できるようにし て,地域的な特性を見やすくする機構を開発してきた\cite{dstorymap}。 本研究では,これまで実装したものに閲覧者の閲覧時の「動きや知識」 などを加えた体験獲得型の要素,すなわちゲーミフィケーション要素を 加え,歴史的資産を印象的に記憶に留めることを促進するようなシステ ムについて提案する。 \section{これまでの取り組みと課題} 1990年代から2000年代にかけての,全地球測位システム(GPS)の民間開 放とGoogleマップ\footnote{\url{https://www.google.com/maps/}}の 普及は,電子的な地図の利用を加速させ,いまではスマートフォンなど のモバイルデバイスを用いた道案内サービスなどが生活に溶け込むまで になった。 本学でも平成27(2015)年度に山形県酒田市からの委託研究事業として取 り組みを開始した「さかたまっぷ\footnotemark」にて,地域に散在す る地物に関連する記述や写真などのデジタルデータを電子地図の上に載 せるための効率的処理体系をまとめた。そこで構築した技法を活かす形 で酒田市\ruby{日向}{にっこう}地区において,除雪時期に寄せた雪の せいで見落して転落しやすい水路を電子地図上にまとめ,接近時にそれ を知らせる事故防止のためのシステムを開発した \cite{suiromap,nouhau}。 \footnotetext{\url{https://sakatamap.geocloud.jp} - 酒田市の提供 する地理情報システムで市民の生活に役立つ様々なコンテンツを提供し ている。このうち「大学連携」コンテンツは本学の委託研究の成果物で ある。} これらの活動の中で,電子地図上に載せる情報には,その場所にどのよ うな意味合いを持たせるかの「{\bfseries 思い}」が重要であるとの知 見を得た。たとえば,「水難事故が起きやすい」との地点情報は,あた かもその場所が危険一色であるかのような印象を与えやすい。しかしな がら水量の多い場所は,平時には水資源という自然のめぐみと豊かな景 観を提供するところであるため,本来は親しみをもって訪れて欲しい場 所である。これらの多面性を表現できるものでなければ住民の満足する ものにはなり得ない。 また,地域の文化資源のアーカイブに持たせる「思い」は,それらの継 続性にも影響を与える。歴史公開サイトが閲覧され続けるためには記録 に対する想いが重要であることを,皆川は北海道遠軽町のデジタルアー カイブを通じて指摘した\cite{皆川2019,engaru}。思いをいかに込める か,という問題は地域に依らず重視されるべきと言える。 これらのことを受けて我々は,地域の人が特定の地点に対して,様々な 状況下に応じて抱く複数の「思い」を反映させることのできるシステム を「おらほの町の『思い』伝承マップ」として開発した \cite{orahomap1}。本研究では,これに歴史的な「時代」という軸を加 え,子孫に向けてのメッセージも込めることのできる機構に発展させる こととした。 \subsection{松ヶ岡地区と松ヶ岡開墾場} \label{mm} 山形県鶴岡市羽黒の松ヶ岡地区にある国指定史跡の松ヶ岡開墾場は,明 治2年(1869年)の戊辰戦争での庄内藩降伏を切掛に,藩の存続をはかる ため鶴岡東部の当時荒れ地であった一帯を開墾する事業によって整備さ れた蚕室群を中心とする場所である\cite{matsugaoka-chap2}。 こうした歴史的価値と意義を持つ史跡に関わるもののデジタルアーカイ ブに込めたい地域住民の「思い」はどのようなものであるかを調査した。 2019年度より松ヶ岡産業株式会社清野氏,鶴岡市の協力を得つつ,周辺 地域の時代的変遷やこの地域をどのような位置付けとして捉えているか を把握するため,数回のヒアリング機会を設けた。そこで得られた「思 い」を要約すると以下のようなものであった。 \begin{itemize} \item 松ヶ岡開墾場を訪れる人が増えるのは望ましい。 \item 到着までの目印が少なく迷う人が多いのをなんとかしたい \item いたずらに訪問客の人数が増えることは望まない \item 絹から始まる庄内全域の産業と人の交流の歴史を知って欲しい \end{itemize} 最後に挙げた点が最も深い思いであり,蚕のエサとなる桑園から,養蚕, 製糸,捺染,抜染,防染を経て衣料品までに作り上げる工程,さらにそ れを運輸・販売する産業全てが結びつき,「持ちつ持たれつ」の関係性 を築いていた。かつては松ヶ岡開墾場に学習訪問する学校もあり,こう した地域産業の成立ちの学びを提供する機会もあったという。 松ヶ岡開墾場のことを伝承するデジタルアーカイブの構築に当たっては, 以上のような要素を極力反映できる形が望ましい。 \subsection{システムに求められる要件} \ref{mm}をふまえ,本研究で提案するシステムが具備すべき要件を以下 のように定めた。 \begin{description} \item[周辺情報の提供] 開墾場だけでなく周辺に存在する関連施設等 の情報が示されること。また,開墾場を目的地とした移動 の補助がなされること。 \item[歴史的な経緯を学べること] 幕末期に開墾に至った経緯から, その後国力発展につながる作業へと変遷したことや絹織物 を軸とした地域産業の発展につながったことなどが気軽な 観光目的の利用者にも伝わる工夫があること。 \end{description} 今回対象とする松ヶ岡開墾場だけでなく,将来的に複数の史跡を対象と する可能性などを考慮し上記の点に加え,コストや権利関係などの面で 実現可能性の高いものを選択する方針で設計を試みた。 \section{体験獲得型デジタルアーカイブ\sr} 本研究では,松ヶ岡開墾場を対象とし,この施設の歴史的意義と周辺地 理の理解を促進するシステム\sr を設計した。 \subsection{\sr{}の概要}\label{outline-sr} % \begin{quote} % 誰がどこでどういう状況で使うとこうなる, % それはどういう効果を狙ってのもの, % といったことを書く。 % \end{quote} \input{about-reroad} % 別ファイルは \input に拡張子なしで呼ぶ \subsection{システム構成と動き}\label{by-ryusei} \input{thesis-system-reroad} \section{システムの設計} \sr の設計について,インターフェースWeb,位置呼応マップ,VRイン タラクションの設計について枠組みを説明する。 %\subsubsection{インタフェースWeb} % \input{system-web} % 別ファイルは \input に拡張子なしで呼ぶ \input{thesis-system-web} \subsection{位置呼応マップ}\label{by-yoshino} % \input{system-map} % 別ファイルは \input に拡張子なしで呼ぶ \input{thesis-system-map} \subsection{VRインタラクション}\label{by-ryusei2} \input{thesis-system-vr} % \subsection{クイズ展開モジュール} \input{thesis-system-quiz} \section{検証と考察} % \begin{quote} % 実際に動かしてみての,狙った効果がどの程度実現されているかにつ % いて数値的根拠を示しつつ検証する。 % \end{quote} \begin{table}[b] \centering \caption{動作確認環境一覧}\label{envs}\small \begin{tabular}[t]{rll}\\\hline & 機種/OS & User Agent(ブラウザ) \\\hline 1 & ThinkPad X260/Linux Mint 20 Ulyana & Firefox 85.0\\ 2 & Ryzen5(Virtualbox下)/Windows 10(1909)& Edge 88.0.705.56\\ 3 & iPhoneXR/iOS 14.3 & Chrome 87.0.4280.77\\ 4 & Lonovo TB-8705F/Android10 & Chrome 88.0.4324\\ 5 & MacBook/macOS 11.2 & Safari 14.0.3\\ \hline \end{tabular} \end{table} 今回作成した\sr{}について,当初の目的を達するに相応しい動きを提 供できているかについて検証した。動作検証に当たっては幅広いプラッ トフォームでの確認となるよう複数の環境を用意した(表~\ref{envs})。 \begin{itemize} \item シナリオパート シナリオパートは\ref{respdesign}で述べたレスポンシブデザ インの反映がされているかについて確認したところ,全てのブ ラウザで正しく反映されることが確認できた。既に,Internet Explorer 等の旧設計のもの以外は,CSS3を正しく解釈できるエ ンジンを用いているためこれは予期したとおりの結果と言える。 \item マップパート Web地図とGPSによる現在位置情報を組み合わせて情報提示を行 なう機構は,既に先行研究\cite{koekistorymap202003}で確認 済みであるため本研究のシステムでも問題なく動作が確認でき た。もっとも機構については確認できたが,この部分が実際の 利用者の周辺案内としての実効性があるかの試験は行えなかっ た。 \item VRパート VRパートは重力(加速度)センサを利用しての利用となるため, スマートフォン/タブレットでの操作試験を行い,端末の回転 と目標物を画面中央に置いて一定時間(1秒)経過するとあらかじ め設定したURLに移動する挙動を実現できた。 なお,VR操作に共通した課題点ではあるが,注視点に合わせる 操作が不慣れな人にとっては容易でない点や,一度経験すると 二度目以降は逆に煩わしく感じられることへの配慮が必要であ ると分かった。 \item クイズパート \begin{figure}[tb] \centering \includegraphics[bb=0 0 1165 328,width=0.98\columnwidth]{img/quiz-csv.jpg} \caption{クイズデータ作成画面} \label{quizmaking} \end{figure} クイズパートに関しては,設問の作成とシステムへの組込み容 易性について確認した。クイズに関しては,システム開発技能 を持たない者も参加するため,Web形式での出題に必要なカラム を定めて表計算ソフトウェアで作成(図~\ref{quizmaking})し, それをシステムから直接読み取り可能なCSVに変換して用いた。 また,上述のシナリオパートのデータも同様の設計とした。こ のことで,ストーリーや設問の置き換えが人を選ばず行える。 \end{itemize} 全体の評価として,上記いずれのパートも処理の対象とする題材がパラ メータ化されており,適用対象の変更が効率的に行えることを確認し た。 % \input{evaluation} % 別ファイルは \input に拡張子なしで呼ぶ \section{まとめ} 本研究で提案したシステムによって,地域在住者の思いに関わる地物情 報や文化的知識を統合した形で閲覧者に提示できることが確認できた。 折しも,2019年末に発生したCOVID-19が世界中に蔓延している情勢下で 自由な外出と交流が制限されていたため,実際に地域住民や観光者への 適用検証ができなかったことは痛恨の極みであった。しかしながらその 間,「思い」の要素を伺う機会を幾度か得ることができた。1年半程度 の短期間ではあるが調査の繰り返しによって,過去に寄せる思いの方向 性・強さと,未来に対するそれが変化し続けている様子を感じられた。 我々の当初の構想では,「1.時代ごとに存在する過去の資料」,「2.閲 覧者の居場所や現有知識という状態」,「3.提供者の持つ思い」の3要素 の組み合わせと捉える場合に,動的に変わるパラメータは閲覧者の状態 だけであると考えていたが,提供者の思いも移りゆくものであると考え て設計しなおす必要があるのではないかと考えた。 今回松ヶ岡開墾場に触れる機会を経て情報収集の中感じたのは,一定の 規模を持った史跡はインターネット上に複数の情報提供サイトが存在し, それぞれが個別に情報発信しているということであった。それらの規模 になると地域の思いよりは観光誘致といったはっきりとした目的が見て 取れる。いっぽう,観光目的でなく人に依ってそれぞれ異なる地域資産 への思いを汲み取りそれをアーカイブ化するのであれば,「個」の思い を「個」のスペースで表現するフレームワークが必要であると感じた。 「個」の思いの表現の集合体によってさらに生まれる思いの塊がどのよ うなものになるのか,その設計から始めることを次の課題としたい。 \section*{謝辞} % 本研究は,山形県酒田市・東北公益文科大学「GISコンテンツ作成業務委 % 託研究」ならびに平成29年度私立大学研究ブランディング事業タイプA % 「日本遺産を誇る山形県庄内地方を基盤とした地域文化とIT技術の融合 % による伝承環境研究の展開」の助成を受けた成果である. 本研究の遂行に当たっては松ヶ岡産業清野忠氏,鶴岡市政策企画課奥山 真裕氏に資料提供やなど多大な協力を頂いた。ここに感謝の意を表す。 \bibliographystyle{junsrt} \bibliography{storymap} \end{document}