<html> <head> <meta charset="utf-8"> <title>公益学総論(広瀬担当).koeki-u.ac.jp</title> <link rel="stylesheet" type="text/css" href="ksdesign.css"> <link rel="stylesheet" title="Presentation" type="text/css" href="project.css"> <link rel="alternate stylesheet" type="text/css" title="Outline" href="outline.css"> <link rel="alternate stylesheet" type="text/css" title="Abstract" href="abstract.css"> </head> <body> <h1>公益学総論<br>(情報技術と公益)</h1> <div class="abst"> <p class="author">広瀬雄二</p> <p class="right nodeco"><code> <a href="http://www.yatex.org/koeki/2014-ksd/">http://www.yatex.org/koeki/2014-ksd/</a></code></p> <p> 情報技術は様々な分野に浸透した。デスクワークの行なわれる場所には必ず 計算機(PC)が配備され、それなしでは業務が全く成り立たないまでに至った。 また、個人生活においても携帯電話を代表とする情報通信機器が普及し、 やはりそれに依存する人々が増加している。 </p><p> いつのまにか普及した感の強い情報技術であるが、それらはどのような目標で 技術開発されてきたのだろうか。多くの場合それらは、人々の欲求を満たすことを 目指して開発されてきたものであるが、 将来を見越した公益的精神に基づく研究開発も多い。 しかしながらマスメディアにそうした目標や活動が正しい文脈で紹介されることは ほとんどなく、ほとんどの人にとって「IT」と「公益」が密接な関係にあるとは 感じられないのが現状である。 </p><p> 本講義では、情報技術の発展を公益・非公益という側面から振り返り、 研究開発の根底に流れる精神がわかりやすく 一貫したものであることを紹介する。 また、情報技術を公益的な方向に進めるために、 利用者全体が意識しておくとよいことの一例を紹介する。 </p> <p class="right"><img src="qr-ksdesign.png" alt="qrcode" width="74" height="74"></p> </div> <!-- <p>和田先生: 「専門分野を究めると『公益』の概念・切り口の重要性に行き着くのだろうか?」</p> --> <h2>情報技術とは</h2> <h3>一般的イメージ</h3> <div class="topic border"> <p>ハイテク、ブロードバンド、iPhone、Android、 パソコン、最新アプリケーション、デジタルデバイド(情報格差)、疎外感……</p> </div> <p>これらは商業的側面にすぎない。</p> <h3>情報技術と商業的技術の目指すもの</h3> <dl> <dt>情報技術の目指すもの</dt> <dd><p>単純: 「誰かに情報を伝えること」</p></dd> <dd><p>「誰か」とは誰なのか? 自分、仲間、他人、現在の、未来の…</p></dd> <dt>商業技術の目指すもの</dt> <dd><p>「誰にでも」ではなく「顧客にだけ」</p></dd> <dd><p>今の顧客が未来の顧客とは限らない。</p></dd> <dd><p>→ 会社と契約し続けなければ情報が伝わらなくなる。 たとえそれが自分自身の情報でも…</p></dd> <dd><p>→ 金の切れ目が縁の切れ目(自分の情報資産もさようなら)</p></dd> </dd> </dl> <ul> <li><p>一度掴んだ顧客は離さない(<em>ベンダーロックイン</em>) → 「サポート停止」+「バージョンアップ」のサイクル</p> </li> <li>「クラウド」時代の新たなリスク「データロックイン」 → データもベンダーの手中に</li> </ul> <h3>商業主義のアンチテーゼとして</h3> <ul> <li><p>「顧客にだけ有利に…」が行きすぎると疎外合戦になる。</p></li> <li><p>「標準化」作業…… → Web技術</p></li> </ul> <h2>Web技術の発展</h2> <h3>誕生</h3> <p>1991年8月6日</p> <div class="topic"> <p>.....</p> <p>The WWW project merges the techniques of information retrieval and hypertext to make an easy but powerful global information system.</p> <p>The project started with the <span class="e">philosophy</span> that much academic information should be freely available <span class="e">to anyone</span>.</p> <p class="noindent">.....</p> </div> <p class="right">By Tim Berners-Lee<br> WorldWideWeb project<br> C.E.R.N. </p> <p>1993年、世界初のグラフィカルブラウザ Mosaic の無料公開により爆発的に普及。</p> <h3>その後のWWW</h3> <div class="indent c"> <pre> 文字、画像、音を伝えるシンプルな道具 ↓ Windows95 でMS参入(1995年) ↓ IEで庶民の目を引く独自機能を追加 ↓ ソフト供給者による機能追加競争 (NetscapeとIEの「ブラウザ戦争」) ↓ "to anyone" の崩壊 ↓ 反省 ↓ W3C(The World Wide Web Consortium)設立 ↓ 標準化推進 ↓ HTML4で "to anyone" を取り戻す (1999〜2000年) </pre> </div> <h3>HTMLのフィロソフィ</h3> <p>HTML(Hyper Text Markup Language; Web文書の記述言語) の設計思想は:</p> <dl> <dt>「わけへだてなく誰にでも平等に伝える」</dt> <dd><ul> <li><p>画像表示機能、広い画面、色情報、視覚、聴覚、 いずれが欠けても、等しく内容を伝える。</p></li> <li><p>使用機種、時間が違っても正確に伝える。</p></li> </ul></dd> </dl> <p>「みんなのため」を強く意識したもの。</p> <h2>情報技術の公益性</h2> <p>情報技術はつねに、独占したがる技術と "to anyone" 技術のせめぎあい。</p> <h3>たとえばインターネット</h3> <dl> <dt>インターネット普及以前</dt> <dd><p><img src="img/net.png" alt="Before Internet" width="531" height="431"></p> <p>独自性の高い互いに独立したネットワークで相互通信は困難</p> </dd> <dt>インターネット</dt> <dd><p><img src="img/inet.png" alt="the Internet" width="531" height="499"></p> <p>同一規格(TCP/IP)に基づいたネットワークの世界的集合体</p> </dd> </dl> <p>「みんなでつながろう」を具現化したもの。</p> <h3>たとえばソフトウェア</h3> <table class="border"> <tr><td><p>ソフトウェアは知的財産である。 作者は大きな対価を得るべきで、 その権利は保護されるべきである。</p></td> <td style="vertical-align: middle; width: 5em; text-align: center;"> <p>← →</p> </td> <td><p>ソフトウェアは知的財産である。 知的財産は広く共有すべきである。</p> </td> </tr> </table> <p><em>フリーソフトウェア</em>が自然発生した。</p> <ul> <li>必要に迫られて(なければ作るしかない)</li> <li>同じ作業をする人を助ける(おすそ分け精神)</li> <li>無料公開の爽快感(承認欲求+自己実現欲求)</li> </ul> <p>「みんなで自由に使おう」を具現化したもの。</p> <h3>GNUプロジェクト</h3> <p>ソフトウェアの公益性を語る上で欠かせない存在。 <em>ソフトウェアは自由であるべき</em>という思想で、 様々なフリーソフトウェアを生み出している。</p> <p>創始者: <a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/リチャード・ストールマン"> リチャード・ストールマン</a></p> <p><a href="http://www.gnu.org/philosophy/philosophy.ja.html"> GNUプロジェクトの思想</a></p> <h4>ソフトウェアの自由とは</h4> <ol start="0"> <li>プログラムを実行する(使う)自由</li> <li>プログラムを解析・改良・引用する自由</li> <li>身近な人を助ける(再配布の)自由</li> <li>改良プログラムを公開する自由</li> </ol> <p>これらをまとめたものが<em>GPL(GNU Public License)</em>であり、 これらの自由は配付した相手、更にその次の人、更にその次の…、 限りなく適用されなければならない(GPLの伝染性)。</p> <div class="notice"> <pre> みんなのためにソフトウェアを作る。 それを使った人がhappyになるため。 それを改良したい人がhappyになるため。 改良したものを使った人がhappyになるため。 </pre> </div> <p class="shout">そんなものあるのか?<br> <br><br><br><br><br>ある<br> それも当たり前のように<br><br></p> <p>最も名の通っているものは Android?<br> (カーネル部分)</p> <h2>オープンソース運動</h2> <h3>広まり</h3> <p>GPLが持つ「全てのソースプログラム公開義務」があると、 「企業秘密」が守れないのではないかという不安感。</p> <ul> <li><p>GPLの高すぎる理想は導入に二の足を踏ませやすい。</p></li> <li><p>自由の強制はしない緩いライセンスが好まれる</p></li> </ul> <p class="topic"> ソースプログラムを公開することに主眼を置いたもの<br> → オープンソースソフトウェア </p> <p>多くのオープンソースソフトウェアが普及した。</p> <h3>文書・データの仕様もオープンに</h3> <ul> <li><p>ファイルに保存するときの書式がオープンで利権中立であれば、 "to anyone" は時空を越えて守られる。</p></li> <li><p>それが大切と啓発することも重要。</p></li> </ul> <h2>自治体のとりくみ</h2> <p>"to anyone" であるべき情報のやりとりには「オープン」 であるものを採用すべき。</p> <h3>はじまりはヨーロッパ</h3> <dl> <dt>ドイツ ミュンヘン市</dt> <dd><ul> <li>2004/6 市議会でオープンソース移行決議</li> <li>2005/6 LiMuxプロジェクト開始</li> <li>:</li> <li>2017 離脱</li> </ul></dd> <dt>スペイン <a href="https://japan.zdnet.com/article/35113422/" >バルセロナ市</a></dt> </dl> <p>市で使用する情報システムはオープンなものに。</p> <h3>日本では2005年頃から</h3> <ul> <li>栃木県二宮町 (役場すべて)</li> <li>北海道札幌市 (水道局)</li> <li>大分県津久見市</li> <li>沖縄県浦添市 (基幹業務端末)</li> <li>会津若松市 (無償オフィスソフトウェアの <a href="http://www.atmarkit.co.jp/news/200805/29/ooo.html"> 全庁導入</a>)<br> (+オープンソースの利用啓発活動)</li> <li>徳島市 <a href="https://www.pref.tokushima.lg.jp/ict/governance/promotion/5020525/5020585/">OSS の利用拡大への取り組み</a>(自治体OSSキット)<br> 発展例: 地元業者ウェブチップスによる <a href="https://www.ss-proj.org/about/cms.html">シラサギ</a>を オープンソース公開 全国多数の自治体で採用 </li> <li><a href="https://www.city.shiojiri.lg.jp/gyosei/shisaku/johoka/20141105162926674.html">塩尻市</a> 塩尻市発グループウェア <a href="http://www.symc.link/">Symc</a>など活発<br> <a href="https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1802R_Y3A910C1000000/" >「ITシステムの地産地消を、長野塩尻で協議会を新設」</a> (日本経済新聞) </li> </ul> <h3>島根県松江市の場合</h3> <p>世界中で使われているプログラミング言語Rubyの作者 まつもとゆきひろ氏が活動の拠点としていることを最大限活かした。</p> <ul> <li>2005年に初めての人口減少を迎えた</li> <li><em>若者が働く場所</em>を作ることに注力</li> <li>大都市の真似をしても意味がない……</li> <li>一点突破</li> <li>オンリーワンで人の心に火をつける<br> <a href="http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061121/254326/?ST=oss&P=1">松浦松江市長日経ITproインタビュー</a> <ul> <li>ハコモノがなくてもネットワークがあれば人を呼べるITに絞った</li> <li>過去の誘致経験から「企業が必要としているのは人材」</li> <li>「オープンソースはまさに人材育成」</li> <li>東京にはない環境のよさ</li> </ul> </li> <li>交流の場<a href="http://www1.city.matsue.shimane.jp/jigyousha/sangyou/ruby/rabo_open.html">松江オープンソースラボ</a>開設</li> <li>産学官による取り組み開始:<br> 自治体の企業誘致施策: <a href="https://www.shimane-style.com/support-system/racial-preference.html">しまねスタイル 優遇制度</a> <table class="border"> <tr><td>家賃補助</td><td>(8年間)県の補助50%、市の補助50%(最大)</td></tr> <tr><td>航空運賃補助</td><td>(5年間)島根県/米子空港の場合50%補助</td></tr> <tr><td>通信費補助</td><td>(5年間)50%補助</td></tr> <tr><td>雇用補助</td><td>1人あたり県と市合わせて130万円</td></tr> <tr><td>人材確保育成補助</td><td>(3年間)所要経費の50%</td></tr> </table> </li> </ul> <h2>情報化社会の未来のため</h2> <p>重要なのは:</p> <div class="topic"> 「自由」と「オープン」を大切にするマインド </div> <h3>地産地消/共存共栄</h3> <p>OSSに対して、機能と費用で比べたら価値を見失う。</p> <ul> <li>自分のデータは誰のもの?</li> <li>他所で作られたものを導入するだけでよいのか</li> <li>本当にそこまでの機能が必要か</li> <li>地元の人を育てる意識</li> <li>隣におすそわけ</li> </ul> <h3>デジタルアーカイブでも</h3> <ul> <li>デジタル化の技術進歩で記録できるものが増えた</li> <li>しかし権利関係で自由に使えない問題で頓挫</li> </ul> <p>データもシステムも自由なライセンスで固めておかないと未来に残せない。</p> <h2>おまけ: OSSの一例</h2> <dl> <dt>オフィススイート</dt> <dd><a href="https://ja.libreoffice.org/">LibreOffice</a>, <a href="https://www.openoffice.org/ja/">Apache OpenOffice</a></dd> <dt>グラフィクス</dt> <dd><a href="https://www.gimp.org/">GIMP</a>(<a href="https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/gimp/" >窓の杜</a>), <a href="https://inkscape.org/ja/">Inkscape</a>, <a href="https://krita.org/jp/">Krita</a>, </dd> <dt>3D</dt> <dd><a href="https://www.blender.org/">Blender</a>, Sweet Home 3D(<a href="https://mag.osdn.jp/11/03/02/0632229" >紹介</a>)</dd> <dt>動画編集</dt> <dd><a href="https://shotcut.org/">Shotcut</a>(<a href="https://freesoft-100.com/review/shotcut.html" >使い方</a>), <a href="https://www.openshot.org/ja/">OpenShot</a>, <a href="https://kdenlive.org/en/">Kdenlive</a> </dd> </dl> <h2>URL<br> <img src="url.png" alt="https://www.yatex.org/gitbucket/yuuji/ktt/pages/pr.html" width="246" height="246"> </h2> <address> <code>yuuji<!-- Kilroy -->@<!-- was -->koeki-u.ac.jp</code> </address> </body> </html>