\documentclass[a4j]{jarticle} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \usepackage{float} \usepackage{url} \usepackage{ascmac} \usepackage{multirow} \usepackage{tabularx} \addtolength{\topmargin}{-2cm} \addtolength{\textheight}{3.5cm} \addtolength{\textwidth}{2cm} \addtolength{\oddsidemargin}{-1cm} \addtolength{\evensidemargin}{-1cm} \title{待ち人数共有システムの提案} \author{廣瀬研究室4年\\C1160310 大石桃菜} \date{令和2年1月22日} \begin{document} \twocolumn[ \maketitle \begin{center} {\bfseries 概要} \end{center} 街中の各所で飲食店やアーティストのライブコンサートでのグッズ販売などによる待ち行列を目にする。行列によっては、1時間以上の待ち時間が発生する場合もある。現状として普段の生活において待ち時間が発生する場面は、病院や金融機関のATMなど日常的にある。また、実際に目的地に足を運んでから待ち時間や行列が発生していることを知ることも少なくない。そこで、本研究では混雑により待ち時間が発生する場所で活用可能な待ち人数共有システムを作成する。様々な場面で応用可能な待ち時間共有システムとし、事前に待ち時間を把握することで、利用者が時間をより有意義に活用できることを目指した。その上、作成したシステムを実際に使用し、東北公益文科大学教育研究棟の各研究室を酒田市の飲食店に置き換え実験を行い、本システムの有効性について考察した。 \vspace*{2em} ] \section{背景} 1980年代後半から現代にかけて、日本ではテーマパークでの混雑や街中の様々な店舗において行列に並んでいる風景をよく目にする\cite{plus}。普段の生活においてもスーパーのレジや人気の飲食店などで日常的に待つ機会が多数ある\cite{lan}。 行列には待ち時間がつきものである。ディズニーランドや富士急ハイランド等の遊園地においてはアトラクションごとに待ち時間を表示するシステムも存在する。しかし、飲食店や屋台などにおいて待ち時間が確かめられるシステムが導入されていることは少ない。その理由としては、コストがかかることや導入してから運用していくことができない現状であること等が考えられる。限られた従業員で仕事を分担している飲食店からすると、そういった雑務は減らしたいと考えるのが妥当である。 本研究では、様々な場面で応用可能な待ち時間共有システムの提案することにより、事前に待ち時間を把握することで、利用者が時間をより有意義に活用できることを目指す。 \section{システムの提案} 本研究では、待ち時間の発生する場所でリアルタイムに待ち人数がわかるシステムの提案をする。情報共有システムにおいて、情報を共有する上でなるべく利用者の情報に統一性を持たせる必要がある。そのため、感じ方に個人差がある待ち時間ではなく待ち人数とすることで、個人差が生まれにくいようにしている。 \subsection{目的} 本研究の目的は、利用者が事前に待ち時間を把握することで時間をより有意義に活用することである。 \subsection{前提条件} 本システムを利用する際の前提条件として以下の点を挙げる。 \begin{description} \item[利用可能な場面] \mbox{}\\ 本システムにおいて一番有効的だと考えられる場面は、複数の場所の待ち人数を比較したい場合である。登録している場所であればシステム内で比較することができる。例を挙げると、街の中で待ち時間が発生しやすいいくつかの店舗を登録して利用することや、グルメ・フードフェスで利用することが可能である。 \item[利用不可能な場面]\mbox{}\\ 本システムにおいて利用が困難であると考えられる場面は、いくつかあると考えられる。まず、バス停や電車などの待ち行列の場面が挙げられる。バス停や電車の待ち人数を把握し、比較したところで利用者に有益な情報が与えられるとは考えにくい。また、バスや電車は基本的に時間通り運行しているため、決まった時間になれば待ち行列も解消されると考えられる。 \end{description} \subsection{システムの説明} 今回は、待ち時間の発生する場所から待ち人数共有システムに待ち人数情報を送信し、それらをリアルタイムでWeb上に表示するシステムを作成する。 実際に、待ち人数情報を送信する者の属性は、「店の担当者」や「システムの管理者」等に限定せず、情報を持つ人なら誰でも情報を共有できるシステムとする。その理由としては、店側がシステムを利用するために時間や人員を割く必要を無くすためである。 以下は、システムの流れのイメージ(図\ref{fig:gaikan})である。 \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=5cm]{gaikan.pdf} \caption{システムの流れ} \label{fig:gaikan} \end{figure} \section{待ち人数共有システムの開発} システムの開発については、以下のようになる。 \subsection{システムの作成} システムの構成としては、待ち人数登録ページと待ち人数表示ページがあり、それぞれのシステムにデータベースを用いている(図\ref{fig:kose})。 \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=6cm]{kose.pdf} \caption{システムの構成} \label{fig:kose} \end{figure} \begin{itemize} \item 待ち人数登録ページ\\ 待ち人数を登録するWebページである。実際に待っている人が情報を入力するため、簡潔に必要な情報を入力するものとした。入力する情報は、「待っている場所」と「待っている人数」の2点である。ここでは、SQLite3ライブラリを用い、RubyからSQLite3データベースにアクセスをしている。SQLliteで構築したテーブルは表\ref{tab:table2}である。Webページの入力フォームからデータを取得し、上記の2点の情報をデータベースに登録する仕組みである。 \begin{table}[H] \centering \caption{待ち人数情報テーブル} \begin{tabular}{|l|l|} \hline name & waiting\_people \\ \hline 小松鮪専門店 & 20 \\ \hline 麺屋酒田inみなと & 10 \\ \hline \end{tabular} \label{tab:table2} \end{table} \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=6cm]{toroku.png} \caption{待ち人数登録ページ} \label{fig:toroku} \end{figure} \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=6cm]{torokugo.png} \caption{待ち人数登録後のページ} \label{fig:torokugo} \end{figure} \item 待ち人数表示ページ\\ 待ち人数登録ページにて登録された情報をデータベースから表示するページである。同じ場所から入力された場合、自動で「待ち人数」の情報のみが上書き更新するようになっている。 \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=6cm]{hyoji.png} \caption{待ち人数表示ページ} \label{fig:hyoji} \end{figure} \end{itemize} \section{実験} 作成したシステムの有用性について実験で検証し、実験結果から考察を述べる。 \subsection{実験1} 音楽フェス「REDLINE ALL THE BEST 2019 〜10th Anniversary〜」会場のグッズ販売の列に筆者を含む2人で待ち行列に並び、本システムを利用した。事前にイベントに合わせた選択肢に変更し、実験に望んだ(図\ref{fig:redline})。待ち人数が発生した場合、システムの待ち人数登録画面の入力フォームからアーティスト名と待ち人数の情報を送信し、それらの情報が反映されるかを調べた。また、待ち人数表示画面からそれらの情報を得たことで働いた効果について調べた。 しかし、2人という少ない人数であったこととグッズ販売の場所の混雑により、有益な結果が得られなかった。そのため、実験2を行った。 \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=5cm]{redline.png} \caption{実験1に設定を合わせた画面} \label{fig:redline} \end{figure} \subsection{実験2} 本学の21〜22歳の学生6人を対象に東北公益文科大学教育研究棟(図\ref{fig:konai})の各研究室を酒田市の飲食店に置き換え、実験を行った。学生6人のうち4人は、実験協力者としてデータを取るためのサポート役として実験に参加した。システムを使用した者とシステムを使用しない者でどちらがより早く待ち人数が少ない店にたどり着けるかについて検証した。同時に各飲食店の情報を登録するために3箇所にそれぞれ1人ずつ向かわせ、システムを使用してもらった。歩数の計測も行うことで、どのくらいの距離を歩いたかの計測をした。 被験者には、それぞれA〜Eまでの役を振り分け実験を行った。A〜C役は、待ち人数登録ページを使用して各箇所に示されている待ち人数を登録した。D役は本システムを利用せずに待ち人数の少ない箇所を探し、E役は本システムを利用して待ち人数の少ない箇所を探した。 実験2では以下のように選択肢に変更した(図\ref{fig:sakatain})。 \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=5cm]{konai.pdf} \caption{実験場所の図} \label{fig:konai} \end{figure} \begin{figure}[H] \centering \includegraphics[width=5cm]{sakatain.png} \caption{実験2に設定を合わせた画面} \label{fig:sakatain} \end{figure} \subsection{実験結果} 実験結果を述べる。ランダムに各箇所に待ち人数を設定し、待ち人数を示した用紙を置いた。その結果が以下のとおりである。 \begin{table}[H] \centering \caption{各箇所の待ち人数設定値} \begin{tabular}{|l|r|r|} \hline & \multicolumn{1}{l|}{1回目} & \multicolumn{1}{l|}{2回目} \\ \hline 小松鮪専門店 & 50人 & 30人 \\ \hline 麺屋酒田inみなと& 4人 & 20人 \\ \hline 満月 & 10人 & 3人 \\ \hline \end{tabular} \label{tab:table} \end{table} システムを利用していない被験者Dとシステムを利用した被験者Eの記録を比較した。スタートしてからかかったタイムについては、1回目・2回目共に被験者Eの方が早く待ち人数が少ない場所にたどり着くことができた(表\ref{tab:time})。また、歩数においても1回目・2回目共に被験者Dより、被験者Eの方が少ない歩数でスタート位置に戻ってくることができた(表\ref{tab:hosu})。 \begin{table}[H] \centering \caption{被験者D,Eのタイム差結果} \scalebox{0.75}{ \begin{tabular}{|l|r|r|r|} \hline & \multicolumn{1}{l|}{D(システム無し)} & \multicolumn{1}{l|}{E(システム有り)} & \multicolumn{1}{l|}{DとEの差(D-E)} \\ \hline 1回目 & 2分42秒 & 2分10秒 & 32秒 \\ \hline 2回目 & 3分20秒 & 1分56秒 & 1分24秒 \\ \hline \end{tabular} } \label{tab:time} \end{table} \begin{table}[H] \centering \caption{被験者D,Eの歩数差結果} \scalebox{0.75}{ \begin{tabular}{|l|r|r|r|} \hline & \multicolumn{1}{l|}{D(システム無し)} & \multicolumn{1}{l|}{E(システム有り)} & \multicolumn{1}{l|}{DとEの差(D-E)} \\ \hline 1回目 & 522歩 & 228歩 & 294歩 \\ \hline 2回目 & 246歩 & 158歩 & 88歩 \\ \hline \end{tabular} } \label{tab:hosu} \end{table} \section{考察} 実験結果から考察を述べる。 \subsection{システムの有用性についての考察} 実験2の結果から、システムを利用していない被験者Dよりもシステムを利用した被験者Eの方がより早く、少ない歩数で待ち人数の少ない場所にたどり着くことができた。これにより、複数の場所の待ち人数を複数人で共有する場合において、本システムの有用性はあるといえる。 \subsection{利用人数の視点からの考察} 実験1の音楽フェス会場で使用した時に情報を共有していたのは2人であった。そのため、本システムで情報を伝えるよりも、LINEやメールなどの普段利用しているツールで情報を交換するのと大差がなかった。もしくは、普段から利用して使い慣れているものを利用した方が有効であるとも考えられる。システムの利用する人数が少ない場合は、本システムの有効性は低いことが考えられる。 \subsection{登録者の有無についての考察} 今回の実験では、両方の場面ともに実験のために学生に協力してもらい実験を行った。そのため、実際に運用するとなった場合に、一般の方が情報を登録してくれるのかについて考える必要が生まれる。実際に店舗で使用する際には、加盟店と協力して特典が付くような工夫が必要になってくると考えた。 \section{結論} 待ち人数共有システムが実際に動かせるようになり、待っている場所と待ち人数について表示することができた。また、実験によってシステムの利用しないより、システムを利用した方がより早く待ち人数の少ない場所にたどり着けることがわかった。 \subsection{課題} 本システムの課題を以下に挙げる。 \begin{itemize} \item {\bf 情報の正確性について}\\ 本システムにおいて情報の正確さは非常に大切なポイントである。しかし、誤った情報が登録されてしまうことや悪意のあるいたずらなどが起こりうる可能性がある。そういった場合、利用者に不利益を及ぼす恐れがある。 \item {\bf システムの管理について}\\ 本システムにおける予期せぬエラーや問題に誰がどのように対応していくか考える必要がある。待ち人数情報の登録者を店側ではなくお客側としているため、システムを継続的に管理していく人員がいない。この問題の対策を考え、備えていかなくてはならない。 \end{itemize} \subsection{今後の展望} 本システムにおける課題を改善し、無料で利用できる待ち人数共有システムとして実際に利用できるようにする。 \bibliographystyle{junsrt} \bibliography{momona} \end{document}