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2019-Onodera / sotsuron.tex
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\title{季節ごとに切り替えが可能なGPS読み取り機能付きWebハザードマップについての研究}
\author{4年 C1160416 小野寺寛之}
\date{}
\begin{document}
\onecolumn   
  \maketitle
  \begin{abstract}
    \begin{flushleft}
    \section{概要}
本研究の説明に至る前に、「ハザードマップ」とは何なのかを解説しておく。ハザードマップのハザード(hazard)とは「危険、災害」を表す英単語である。なので、「ハザードマップ」は災害が発生する地帯の地図を表し、その中で地震の規模と震度による予想を地図上に表した地図が「地震ハザードマップ」である。ハザードマップの歴史は古く、アメリカの地震工学者カール・アリン・コーネルが1968年に地震ハザード分析を提唱して以来、地震の震度や規模を統計的に測定することが可能となった。日本で現在のようなハザードマップが作成されるのは1994年からである。当時は紙ベースだったので、保管や配布の方法が問題視されていた。2000年に有珠山が噴火した際にハザードマップを用いた避難を行い、人的被害を減らすことができた。それ以来、より本格的な研究が行われるようになった。2011年からは大手WebGISであるGoogle Mapが参入し、重要な情報を多く入手することが可能となった。 津波のハザードマップと兼ねている地震ハザードマップもある。本研究ではこのハザードマップを作成し、この地図の社会的意義を発見することを目的としている。2011年の東日本大震災以降、日本に住む人々は災害に対する恐れと、防災や減災に関心を持つようになった。ただし、この地図が万能の安全マップで、これを持っているだけで救われるという保証は無い。それでも街の住人一人ひとりが防災意識を持つことを助ける地図を作成することで社会貢献できれば幸いと考えている。(631文字)
    \end{flushleft}
  \end{abstract}
  \tableofcontents
  \clearpage

  \chapter{序章}
  まず、なぜこの研究に至ったのかをこの章で解説していく。本研究は前年度の研究を継承するものである。
  \section{背景}
  \fontsize{11pt}{20pt}\selectfont
  2011年に東日本大震災が発生して以来,我が国は3度の巨大地震に巻き込まれてきた[1]。東北公益文科大学の位置する山形県庄内地区でも地震やそれによって引き起こされる津波とは無縁ではなく,2019年6月に起きた「山形県沖地震」のような地震災害も発生している。特に酒田は陸と海の活断層に囲まれているため、巨大地震が発生する可能性が高い[2]。巨大な地震は津波や火災などの二次災害を引き起こし、社会の存続に大きな障害を残す性質を持っている。
  また、地震では無いが2019年10月に発生した「台風19号」において、ハザードマップの使用方法と正確さが再び注目されている[3]。東京都と千葉県にはそれぞれ台風のハザードマップが存在しているものの,インターネット上での公表が遅れたため,避難の仕方が分からない、どこに避難すれば良いかが分からない、などのトラブルが発生した[4]。これらのトラブルを二度と起こさないようにするにはどのような対策が必要なのかを考える。
  
%\begin{center}
 %  \begin{figure}[htp]
   % \includegraphics[clip,scale=0.2]{attach_1_org.jpg}
  %  \caption{図1:震災による被害で倒壊した家屋 出典:消防科学総合センター}
 %  \end{figure}
%\end{center}

  \section{目的}
本研究では、巨大地震による犠牲者を東日本大震災よりも増やさないようにしたいというのが目的である。
現代のハザードマップは自然災害のリスクを予測でき、それまでは紙情報でしか調べることができなかった情報をインターネットで気軽に詳細な情報が入手できるようになった。自然災害はあらかじめ回避することも、抑制することもできない。そのため、事前に避難する対策を進めていく必要がある。避難所の情報を増やしたハザードマップを作成するしかないが、避難所には多種多様な人が集まる。高齢者、障がい者、外国人、子供、または傷病者である。
 特に、高齢者や傷病者は動きが遅く、環境の変化にも弱いためそれらのことも考慮したハザードマップを作成する必要がある。

 \subsection{現状}根拠として、Webハザードマップは2011年の震災以降様々な自治体や企業が作成しているため精度は右上がりの一途を辿っているが、山形県は夏と冬の季節変化が激しい土地柄であるため、ハザードマップ通りに避難が進まないのが現状である。2011年の震災では、夏場は熱中症と水分不足に苦しみ、冬場は低体温症やインフルエンザに苦しむ人が多かった。そのため季節ごとに人が快適に暮らせる環境を持った避難所を季節ごとに表し、切り替える機能をつけた地図が必要と考える。また、Webハザードマップを扱うことが困難な人でも扱えるようにする配慮が必要である。
\chapter{ハザードマップの概要と問題点}
\section{災害地域としての庄内地域}
酒田市を含む山形県は宮城県や福島県に比べて地震が少ない。2011年の東日本大震災では、隣の宮城県が2万5949人の死者と行方不明者を出す甚大な被害を被ったのに対し、山形県及び庄内地域は宮城県や福島県に比べて大きな影響は受けなかった。しかし、庄内地域で発生した地震は18世紀から現在にかけて5回ほど発生しており、決して少なくないことが分かる。酒田市は日本海に面しており、日本海東縁変動帯が縦に伸びているので海溝型の地震とは無縁ではないことが分かる。また、真室川町から酒田市東部、鮭川村にかけて庄内東縁断層帯と呼ばれる断層帯が横に伸びているので内陸型地震も発生する。事例として、1780年にはマグニチュード6.5の内陸型地震が発生し、酒田市で土蔵、家が潰れ、死者2人という被害が出ている[4]。
\section{国土地理院の地殻変動マップについて}
国土地理院では、2005年3月から地殻変動情報を記載したマップを作成、運営しており、2018年4月24日のデータが最新とされている\footnote[1]{国土地理院 \url{https://www.gsi.go.jp/kanshi/}}。過去の地殻の活動や火山の地磁気が記載されているので
あるが、Windowsでのみ動作確認を行っているので、他のOSでは地殻変動の動きを観測することはできないことになっている。

\subsection{既存の研究の問題点}
ハザードマップは東日本大震災以降に大幅な見直しがなされることになったが、計算結果に依存しすぎて予測の不確実性が考慮できていなかったこと、地質条件や地形に合わせた避難の仕方が明記されていなかったことが2016年に明らかとなった[9]。特に、地震や津波のハザードマップは災害像を予想しにくいため、発生源や断層\footnote[2]{地震の予測において、どこで大地震が発生するのか把握する基準となる地層}\footnote[3]{地上や海底を支えている土台のことで、フィリピンやことユーラシアなど、様々な種類がある。 地震はこのプレートが重なって、それがずれることで地震が発生する[5]の重なり。地学界隈では「地震の巣」と呼ばれている。断層のタイプには「震源断層」と「活断層」があり、今後も地震を引き起こす可能性が高い断層が「活断層」と呼ばれている。「震源断層」は地震が発生した際の亀裂を指すので、地震を引き起こす可能性は低い[5]}、地域防災単位、過去に発生した地震の情報等の表記が必要である。また、行政や非営利団体による斡旋が上手く行かず、ハザードマップの認知度が極めて低いのも現状である。
\subsection{既存のハザードマップの問題点}
\begin{itemize}
\item[予想が難しい]自然災害を相手にしているため、規模や被害状況、どこで発生するかを明確に特定しにくく、対策が難しい。そのため、明記できてないために、大きな被害を被った事例が東日本大震災の事例である。宮城県、福島県含む三陸沖は700〜400年周期で東日本大震災と同じ規模の地震が発生しているが、数百年という長い年月で発生しているため明記できておらず、対策も出来ていなかった[1]。
\item[見落としがある]これは2016年に発生した熊本地震での事例である。熊本地震では、西原村と益城町では震度7を記録した。しかしハザードマップではその情報が明記されておらず、対策もままならないまま被害を被ってしまった[5]。
\item[関心が薄い]ハザードマップは防災訓練や、実際に発生した場合以外は使用頻度が少ないので、主に若い年代層の認知度は低いと見られている[図1を参照]。
\end{itemize}
  \begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=1.0]{photo2.png}
    \caption{ハザードマップの認知度の統計 出典:中央大学理工学部都市環境学科 河川・水文研究室}
   \end{figure}
  \end{center}
\subsection{Webハザードマップの問題点}
今日の携帯端末の普及により、ハザードマップもデジタル化での普及が進んできた。しかし、電子化を行っても様々な問題点が潜んでいる。ここでは3つの代表的な問題点を取り上げる。
\begin{description}
\item[扱いにくい]デジタル化した機器は,パソコンやスマートフォンなどの情報端末を所持しており、且つ扱える人でないと使うことは難しい。よって、情報機器を触れた事の無い人、情報機器を持っていなかったり、傷病によって情報機器を扱うことができない人はハザードマップを使うことは困難を極める。また、Webハザードマップは使用頻度が少ないので慣れていないと分からない所も数多く存在する。
\item[オフライン時に使いにくい]情報端末はインターネット環境が無いとWebサイトを開くことができない。しかも電化製品であるため、停電や落雷、水に触れるなどのトラブルに弱く、簡単に使えなくなる。情報端末が壊れていたり、インターネットが使えない場合は意味を成さない。また、オフライン環境でも事前にダウンロードした地図を見る等でスマートフォンを使用することができるが、残存電力には限りがある。しかし紙媒体は管理次第では長く保つことができ、使いたい時にすぐ出して使えるので多くの自治体では未だに紙媒体のハザードマップを推奨している。
  \item{}
\end{description}
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=1.0]{gairyakumap.png}
    \caption{概略図}
   \end{figure}
\end{center}
\chapter{研究過程}
3章の通り、ハザードマップには数多くの問題点があることが理解できた。では、どのような打開策が求められるのかをここに表す。
\begin{description}
\item[バリアフリー対応]この「情報機器が扱いにくい人」とはお年寄りなどを含めた身体に支障をきたしている人の総称である。彼らはインターネットやスマートフォンなどの情報機器を扱うのが難しいが、紙媒体で扱うことは可能である。
  紙媒体の地図であれば市役所に行けば貰うことができる。また、インターネット上でもpdfとして印刷することができる。しかし、市役所への道のりが1km以上あったり、印刷する機会があったとしても印刷の方法が理解しがたい場合もある。そこで、印刷機能を実装し、なおかつ簡単な表記と、印刷方法が書かれた説明書を利用者の閲覧が容易な場所に貼り付ければ、紙媒体のハザードマップの浸透に繋げることができると考える。しかし、視覚障害者には、ハザードマップを扱えることができないため、音声による解説機能を実装する必要がある。
\item[夏や冬の避難情報]山形県は夏と冬の環境の差が激しい地域である。とりわけ酒田市は夏場は40度近くの気温、冬場は海岸からの強い風があり、路面も凍結するため危険な場所となる。そこで、冷房や暖房を備えた避難所を切り替えることができる機能が実装されたハザードマップを作成する必要があると考える。
\end{description}
\chapter{提案}
第1章で挙げた背景と目的をふまえ、酒田での地震災害によるリスクを軽減しようと考え、本研究ではハザードマップとして作成する。
江戸時代から現代にかけての地震の記録をアーカイブ上にし、被害の大小を色分けした地図を作成する。幅広い層の人が見やすいように津波や洪水、土砂災害地域、避難所をマーカーで表す。本研究では社会的意義のある地図を作成するため、国土交通省の地図を用いることとした。
\section{国土交通省の地図を元にしたハザードマップ構成}
国土交通省の地図を用いて、説得力のある地図を作成する[14]。 国土交通省のハザードマップは過去のデータと科学的な知見をもとに作成されているため、信頼性が高い。
\section{高齢者にも優しい設計}
高齢者が扱うことも考慮し、文字や機能を大きく表示させる。また、スマートフォンなどの情報機器が扱えない人や、災害時の停電で活用されることも考慮し、印刷機能を実装する。
\section{避難所の場所を特定するのが簡単にできる機能}
避難所や危険区域の場所が分からない、住所を理解できてもそれを調べる方法が分からないなどの問題を解決できる機能を実装し、利便性の向上を追求する。
\section{季節ごとに避難所を切り替えることができる機能}
酒田市を含む山形県は夏と冬の季節の差が激しく、秋には台風や大雨が降る。このような状況で地震が発生した場合を想定して、避難所を切り替える機能を実装する。
\section{初心者にも簡単に理解できる解説書}
ハザードマップの見方の詳細を載せているサービスは少ない。そこで、ハザードマップの見方を載せた解説書を同梱し、Webページ内でも解説書を読むことを斡旋させる。解説書を理解することによって、本研究のハザードマップ以外のハザードマップの利用することが存在しても応用できるような内容にする。
%\chapter{前年度の研究との関連性}
%地震ハザードマップについての最新の記事である「近年の災害が提起したハザードマップの課題(2016年)」と自分の研究を比較して気づいた点は、工学と地理学の手法を組み合わせてマップを作成しているところである。これによって活断層の分布や、地形の隣接関係による危険性の差異を理解することができ、震災が発生した場合の被害を予測し、計画を立て易くなる。しかし、人工的な土地の変化を予測できず、地表に出現する断層の位置を予知することができないという弱点もある。自分の研究では最新のハザードマップと同じく活断層の分布を取り入れつつも、人間の避難を重視した地図を作成することを軸としている[1]。
\chapter{構成}
前章の提案をふまえ、ハザードマップ作成に用いる主な機能を紹介していく。本研究はJavaScriptというプログラム言語で全体が構成されている。
\section{ハザードマップの作成}
ハザードマップ作成に使用した基礎について紹介する。
\begin{description}
\item[JavaScript]Web上で動的な表現を行うためのプログラミング言語。2010年以降からはライブラリ機能が現れ、Web開発のすべての領域で扱われるようになった。
\item[HTML5]HTMLの5回目の改訂版のことで、従来のSGML宣言が不要になった。
  \item[CSS3]HTML内で背景を描くためのW3C\footnote[4]{World wide webによる各種技術の標準化を推奨するために設立された非営利団体。}による仕様の一つ。
\end{description}
ハザードマップの作成には以下のライブラリを用いた。
\begin{description}
\item[Leaflet]JavaScriptのライブラリの一種であり、Web上にタイルベースの地図データを表示することができる。類似したライブラリにOpenLayerやGoogle Maps APIがあるが、Leafletに比べ、OpenLayerは容量が多く、HTML5やCSS3を利用することができない。
  Google Maps APIはLeafletよりも高速で柔軟性があるが、Googleサービスの範囲外で使うことができない。また、民間企業の地図であるため、有料であることに加え、勝手に使用すると著作権侵害になる可能性もある。筆者がleafletを研究に選んだ理由は、容量が軽くて使いやすいということである。
\item[JQuery]JavaScriptライブラリの一種で、Web上で動的な要素を加えるのに用いられる。企業のWebページ上で動的な効果が入っているページに多く使われている。本研究では、マーカーの切り替えに使用した。
\end{description}
\subsection{Leaflet以外の地図ライブラリ}
\begin{description}
\item[OpenLayer]株式会社エヌ・シーエムが提供しているLeafletと同じく地図を作成するJavaScriptライブラリの一種で、難易度はLeafletよりも高いとされている。またGISの知識が多少必要になってくるというのも大きく異なる点である。
 \item[Google Maps API]Google社が提供しているJavaScriptライブラリの一種で\footnote[5]{\url{https://cloud.google.com/maps-platform/?hl=ja}}、Google Mapの地図タイルやデータを用いてマップ作成ができる。ただし上の二つとは違い有償で、1ヶ月約2万円の料金がかかる。
\end{description}
\section{国土交通省の地図データ}
本研究での津波到達範囲と避難所の表示方法について解説する。
\begin{itemize}
\item[マーカー]目印、標識として利用するためのleafletの機能。L.markerを用いて表示できる。
\item[ポリゴン]地図上に作図するためのleaflet機能。L.pollygonを用いて表示できる。
  \end{itemize}
本研究のマーカー及びポリゴンには国土交通省のハザードマップデータを用いている。国土交通省の地図を用いるメリットは2つある。ひとつ目は毎年最新の情報を地図内に載せられるため正確性が高いハザードマップを作ることができるということである。また、ふたつ目は行政の地図であるため、引用元を記載しておけば無償で引用することができるということが挙げられる。
\section{leaflet-omnivore}
leaflet-omnivore\footnote[6]{Leafletの機能の一種で、外部の地図データをLeaflet内に読み込むのに用いられている。}を用いて外部の地図データを自分の地図データとして用いる。外部のデータはShapefileとよばれる状態でダウンロードされることが多いため、KMLファイルに直す必要がある。これはleaflet-omnivoreがKMLファイルしか読み込むことができない性質による。
\section{印刷機能}
情報機器を扱いにくい方々でも用いやすいように、印刷機能を実装した。印刷にはJavaScriptのメソッドの一種のprintを指定し、スクレイピングという機能を用いることで、印刷を可能にした。スクレイピングとは、Webページから情報を集めて加工し、新たな情報として生み出す技術のことである。
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=0.5]{print4.png}
    \caption{print+スクレイピング機能を用いて印刷を行ってみた例}
   \end{figure}
\end{center}
\section{緯度経度表示機能}
避難所や危険区域の位置がどこであるかを調べるために実装している。Leafletの定義クラスの一種であるlatlngを用いることにより、詳細な緯度経度を表示することができるようになる。
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=0.5]{zahyou.png}
    \caption{latlngを用いた座標を示す機能を用いた例。}
   \end{figure}
\end{center}
\section{津波到達予想範囲の可視化}
津波や最上川の洪水がどの周域まで及ぶかを表示するのに用いている。ここではポリゴンが使われており、このポリゴンもleafletのレイヤー機能の一種であるとされる。このポリゴンには様々な色の種類がある。
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=0.4]{newmap2.png}
    \caption{leaflet機能の一つ、pollygonを用いて色分けをした例}
   \end{figure}
\end{center}
\section{避難所の位置の可視化}
酒田市内にある地震あるいは地震によって引き起こされる二次災害からの避難を目的とした場所をマーカーで表している。このマーカーはleaflet機能の一種で、
L.markerというコマンドによって表示されている。JQueryとL.Icon.Default.ImagePathを組み合わせて用いれば切り替えることも可能であり、本研究では
夏と冬の避難所の切り替えに用いられている・
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=0.4]{marker.png}
    \caption{マーカーで避難所を表している。色によって避難所の危険度が表される。}
   \end{figure}
\end{center}
\section{位置情報読み込み機能}
\subsection{位置情報について}
位置情報とは、携帯端末等で利用者が所在する現在地を取得し、状況に応じた情報を提供してくれるソフトウェアサービスの一種である。Web地図サービスやゲームなどに応用されているが、位置情報を読まれ、追跡される危険性もある[1]。本研究のハザードマップには情報端末機器使用者の位置情報が分かる位置情報サービスが備わっており、図3.3では「現在地」と表示しているマーカーが現在地を表している。なお、この位置情報を読み取る機能は本研究の要といえる機能であるため、順を追って説明することとする。
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=0.3]{gps.png}
    \caption{GPSで現在地を示している使用例}
   \end{figure}
\end{center}
\begin{verbatim}[caption=ソースコード2,label=位置情報を表す]
  {\tt function onLocationFound(e) {
          L.marker(e.latlng).addTo(map).bindPopup("現在地").openPopup();
      }
 
      function onLocationError(e) {
          alert("現在地を取得できませんでした。" + e.message);
      }
 
      map.on('locationfound', onLocationFound);
      map.on('locationerror', onLocationError);
 
      map.locate({setView: true, maxZoom: 16, timeout: 20000});}
\end{verbatim}
このようにGPSが表示される仕組みは、HTML5の「Geolocation API」を用いているからとされている。Geolocation APIがGPSから位置情報を読み込む仕組みについては次項で説明する。
\subsection{Geolocation API}
GPS(Global Positioning System)とは米軍が運用している衛星測位システムの略称である。Geolocation APIは「Webの規格団体であるW3Cが使用をすすめる規格であり、JavaScriptで位置情報を取得することが出来る仕組み」である。Geolocation APIを扱うには、「navigator.geolocation\footnote[5]{Webがデバイスの位置情報を読み込む際に必要なプロパティ。このオブジェクトが存在しない場合はGeolocation APIに対応していないということになる。}」オブジェクトを使用する。
\subsection{位置情報を読み込む過程}
GPSを読み込む方法には2種類あり、「携帯電話の基地から送られる衛星軌道データとGPSの時刻信号を複合させて位置を特定する」ものと、「衛星から送られてきた軌道データとGPSの時刻信号を用いるスタンドアロン」なものがある。スタンドアロンとは、ネットワークに依存せずに単体で動作する方法である。このハザードマップで取得できているのは前者であり、多少の時間のズレはあるものの、位置を取得しているのがわかる。
\section{先行のサービス}
本研究と同じくハザードマップの作成を行っている先行のサービスと本研究の比較を行う。
\begin{description}
\item[酒田市のハザードマップ]酒田市役所では、洪水や津波のハザードマップの他に、地震の震度の予想分布図を表した「ゆれやすさマップ\footnote[6]{\url{https://www.city.sakata.lg.jp/jyutaku/jyutaku/taishin/taishinkaisyukeikaku.files/yureyasusa-map-sakata-A3print.pdf}}」を作成している[2]。しかし、酒田市の職員の防災意識は2018年度行政監査で、「相当低い」と指摘され4月16日から抜本的な改善を求められた[8]。
\item[Google Map]Google社\footnote[7]{Google crisis Map https://google.org/crisismap/japan}では「防災マップ」「災害情報マップ」を提供している。GPSやポリゴンを用いた震度分けのほか、気象情報を閲覧することが可能である。
\item[Yahoo!ハザードマップ]Yahoo!JAPAN\footnote[8]{大雨警戒レベルマップ https://weather.yahoo.co.jp/weather/levelmap/?dosha=on}では、インターネット上でリアルタイムの災害情報を掲示している。
\item[株式会社ゼンリン]株式会社ゼンリン\footnote[9]{株式会社ゼンリン https://www.zenrin.co.jp/product/category/planningmap/hazardmap/index.html}では、一つのハザードに特化した詳細なハザードマップを作成している。冊子ではなく、1枚の地図として作成することもできるのも特徴で、避難所や防災メモのほか、土砂災害警戒区域や緊急輸送路の表示もできるという。
  \end{description}

\chapter{考察}
親族や教員、友人10人を被験者として、作成したハザードマップを評価してもらう。

\subsection{実験方法}
実際に地震が発生したことを想定して実験を行う。想定した地震は「震央が山形県沖北緯38.6度、東経139.5度、最大震度7、震源の深さは14km、津波の高さおよそ2m」とする。
\section{評価}
ある教員は、本研究で作成したハザードマップを「見やすくて津波到達範囲もわかりやすい。GPSも備わっていて便利だ」と評価してくださった一方、「説明書が難しくて理解し難い」という意見もあった。
ある友人は「ハザードマップとしての機能は十分だが、スマートフォンでタップすると関係ない所で座標が表示されてしまう。そこを何とかしてほしい」と意見を述べた。
他の教員にも本研究のマップを利用していただいた。「とても見やすくて動きがサクサク進むことができるし、座標軸も示してくれるのでとてもわかり易い。」と評価していただいた。しかし、「初めて利用する人にとってはマーカーの色が何を表すかがわからない。津波到達範囲も詳細な情報をクリックすると表示するようにしてほしい」との意見をいただいた。
ある後輩は「避難所を津波到達範囲順に危険度を色別に表示していて、非常に分かりやすい」と評価してくれた。また、「現在地を読み込んで、現在地に一番近い避難所を表すことができれば更に利便性が向上するだろう」との的確な意見もいただいた。
他の後輩は「津波到達範囲がわかりやすく表示されていて、使いやすい」と評価してくれた一方で、「マーカーをクリックした際に避難所の名前が出てくるようにしてほしい」と意見を言ってくれた。
ある友人は「津波がどこまで来るのかが理解しやすい。また避難所を表すマーカーの色にも意味があって興味深い。」と評価してくれた。意見としては「津波やマーカーの色を初めて見た時はわからないから、説明がほしい」と言ってくれた。また、彼の友人は「マーカーやタイル切り替えるコントローラが小さすぎて分かりにくい」と意見してくれた。

\section{まとめ}
これらの意見を元にグラフを作った。
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
    \includegraphics[clip,scale=1.1]{graf2.png}
    \caption{被験者の感想を円グラフとして表す}
   \end{figure}
\end{center}
一番多かったのが「津波到達範囲の表示が分かりやすい」という点と、「マーカーの意味が分からない」という点であった。
まずひとつ目の津波到達範囲であるが、酒田市内に住んでいると心配になるのが「地震によって引き起こされる津波」なので、
津波がどこまで到達するのかが知りたいが、ハザードマップの見方が分からない。しかし、このハザードマップであれば津波が
どこまで到達するのかが分かるため、実際に使用するうえで便利だ、という評価が多かった。
しかし、「マーカーが分かりにくい」という意見も多かった。マーカーが表しているのが避難所というのが理解できるが、
色が異なるのはなぜなのかが分からない。初めに何かマーカーに関する記載が欲しいという意見があった。
\chapter{今後の展望}
本研究では範囲を酒田市のみと定めてハザードマップを作成したが、山形県全域を含めたハザードマップを作成していきたいと考えている。特に内陸では火災や土砂災害が二次災害として発生する傾向にあるのでこれらを考慮したマップを作成することを考えている。また、今回使用した位置情報読み取り機能は自然災害だけでなく、行方不明者を捜索する際に、スマートフォン等に埋め込むことによって行方不明者を軽減することができると考えられる。警察庁の統計によれば行方不明者は2018年時点で男女約9万人いるとされ、20代が多いといわれている。20代であればスマートフォンを所持している可能性が高いため、彼らの捜索にも活かされるだろうと考えられる。

\section{作成物紹介}
ハザードマップは使われてもらわないと意味がない。そこでGitHubに自分のプログラムを移行し、公開することとした。下のURLを各情報端末のURL欄に入力してEnterを押せば地図が表示される。ページを開いてすぐ位置情報を読み込むか否かを問われるので、「はい」を入力すれば位置情報の読み込みが可能となる。
\section{本研究のURLとQRコード}
\subsection{QRコード}
\begin{center}
   \begin{figure}[htp]
     \includegraphics[clip,scale=0.5]{qrcord.png}
    \caption{図6:WebハザードマップのQRコード}
   \end{figure}
\end{center}
\subsection{URL}
https://koeki-soturon.github.io/hazard-map/map.html

\begin{thebibliography}{99}
   \bibitem[1]{key1}Allin Cornel(1999)Dissaggregation of Seismic Hazard'', Bulletin of the Seismological Society of America.89(2):pp.1-20,
     http://sismologia.ist.utl.pt/sismologia.daemon/files/Bazurro and Cornell Disaggregation of Seismic Hazard.pdf(参照2019-11-30)
   \bibitem[2]{key2}地震調査研究推進本部(2019)「山形県の地震活動の特徴」,地震本部,
     https://www.jishin.go.jp/regional-seismicity/rs-tohoku/p06-yamagata(参照2019-11-01)
\bibitem[3]{key3}Moritz Neun(2006)"Permanent Reference Document SE.23: Location Based Services", pp.1-28, http://www.gsmworld.com/documents/se23.pdf(参照2019-12-01)
\bibitem[4]{key4}鶴岡市(2019)「第三節 既往地震及び津波とその被害」,pp.1-8, 
  https://www.city.tsuruoka.lg.jp/anzen/bousaikeikaku/sinsai-tsunami.files/201908240103.pdf(参照2019-12-01)
\bibitem[5]{key5}酒田市(2016)「酒田市建築物耐震改修促進計画」,pp.11,
  https://www.city.sakata.lg.jp/jyutaku/jyutaku/taishin/taishinkaisyukeikaku.files/taishinkaisyu-sokushin-keikaku-sakata.pdf
   \bibitem[6]{key6}鍋 敏也(2013)「2000年有珠山噴火における火山防災マップの活用実践例」、防災科学技術研究所研究資料.380号:pp.1-4,
    http;//vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/pdf/13.pdf
\bibitem[7]{key7}片山なつ(2018)「伝わるデザイン:研究発表のユニバーサルデザイン」
  <https://tsutawarudesign.com/miyasuku5.html>(参照2019-09-04).
\bibitem[8]{key8}岡田義光著(2011)『日本の地震地図:東日本大震災後版』,p.10-11,東京書籍.
\bibitem[9]{key9}公益社団法人日本地理学会「近年の災害が提起したハザードマップの課題」J-STAGE,2016 (最終閲覧日:2019-09-10)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/11/1/11-325/-pdf/-char/ja
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