\documentclass[a4j]{jarticle} %\bibliographystyle{plain} \bibliographystyle{junsrt} \thispagestyle{empty} \addtolength{\topmargin}{-2cm} \addtolength{\textheight}{3cm} \addtolength{\textwidth}{1cm} \addtolength{\oddsidemargin}{-0.5cm} \addtolength{\evensidemargin}{0.5cm} %\setlength{\parindent}{1zw} \usepackage{color,graphicx,url} \usepackage{indentfirst} %\usepackage{multicol} \title{除雪中の水路への転落事故を防ぐ日向地区水路ナビの作成} \author{澤邉研究室 4年佐藤直人} \date{\today} \begin{document} \twocolumn[ \maketitle %\begin{abstract} \begin{center} {\bfseries 概要} \end{center} 山形県酒田市日向地区では国土交通省の「平成29年度雪処理の担い手の確保・育成のための克雪体制支援調査」に採択され、「水路マップづくりを通じた冬の危険の見える化」と題し、GISを用いた水路マップ作成の事業を行っていた。この活動に東北公益文科大学の学生は講義で参加し、山形県酒田市日向地区の水路の場所とその流れ、除雪時事故が起こる恐れのある場所の調査を行った。また、その情報を用いてGISで「水路マップ」を作成した。 \par しかし、水路マップは多くの方にとって見やすいものであるとは言い切れない。特に位置情報や水路に関する文章の文字の大きさや危険箇所の種類分けなどに対応が必要である。そのため、マップ上に表示されるマーカーの形状を種類別にし、文字の大きさや写真や動画の表示を大きくできる機能を作成する。また、事故を未然に防ぐための機能として位置情報の取得により危険箇所に接近したことを伝える機能を加える。これらの機能を持ったWebページを「日向地区水路ナビ」とする \vspace*{2em} %\end{abstract} ] \section{はじめに} 山形県酒田市日向地区(以下、日向地区)では国土交通省の「平成29年度雪処理の担い手の確保・育成のための克雪体制支援調査(以下、克雪体制支援調査)」に採択され、地区の取り組みとして地理情報システム(以下、GIS)を用いた水路マップの作成を行った~\cite{josetsu}。 これには平成29年度に東北公益文科大学(以下、本学)で開講された「プロジェクト型応用演習 地域コミュニティにおける「防災」の仕組みづくり(以下、本学プロジェクト)」の受講生である本学学生が関わった。本学プロジェクトでは、実地調査、写真撮影を行いそれらの情報を用いて水路マップを作成した。マップ作成の際にはインターネット上でいつでも閲覧や編集ができるGISを用いた。GISでの作成は、紙での作成に比べ、配布や情報の更新に関して簡単に行うことができる。しかし、本学プロジェクトで作成した水路マップは、多くの方に見やすいものではない。そのため本論文では、除雪の際に使ってもらえるようなシステムを開発し何度も見てもらえるマップ「日向地区水路ナビ(以下、本システム)」を提案する。 \section{除雪事故が起こる原因} 除雪中の事故が起きる原因について記す。 \subsection{積雪による事故の発生} 豪雪地帯の積雪は建築物や公共交通機関の機能に多大な影響を与える。建築物については、積もった雪の重みによる倒壊とライフラインの寸断などの影響が考えられる~\cite{1998}。 公共交通機関については、積雪や降雪により運行状況が左右される。道路交通においては毎年交通止めなどの交通障害が発生していてそれも年々増加傾向である。このような雪による被害を抑えるために除雪作業は必須となる。 また、国土交通省国土政策局が平成24年1月25日に「豪雪地帯の現状と対策」で使っている図~\ref{sehu}図~\ref{sesi}から雪による死亡事故はその年の積雪量に比例して起きていることがわかる~\cite{国土交通省}。 \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 700 400,scale=0.4]{./pdf/yukiooi.pdf} \caption{豪雪地帯の累計降雪量} \label{sehu} \end{center} \end{figure} \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 500 350,scale=0.6]{./yukizikooosi.pdf} \caption{雪害による死者数の推移} \label{sesi} \end{center} \end{figure} この死亡事故の多くは除雪中の事故であり、特に死者数の多い平成17年度は除雪中の事故は152人中131人~\cite{jojo6}、次に多い平成22年度は131人中100人~\cite{jojo10}となっている。 除雪中の事故は屋根の雪降ろし中の転落や水路への転落など多岐に渡る。 そのため首相官邸では、複数人での除雪作業を心掛けるように注意を促し、 「命を守る除雪中の事故防止10箇条」を提唱している(図\ref{10kajo})~\cite{内閣府}。 \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 700 800,scale=0.2]{./pdf/009_2.pdf} \caption{除雪事故防止のポイント} \label{10kajo} \end{center} \end{figure} しかし、除雪を必要とする豪雪地帯では地域の高齢化・過疎化が進行しているため、複数人での除雪作業が困難な状態である。豪雪地帯の高齢化・過疎化による除雪作業への影響については次節で述べる。 \subsection{高齢化・過疎化が与える除雪事故への懸念} 事故が起こる原因のひとつとして高齢化率の増加、高齢者世帯の増加が上げられる。 日本の高齢化は年々深刻化し、2017年10月までに日本の高齢化率は27.7\%になって いること~\cite{koure}。 豪雪地帯でも高齢化・過疎化によって地域の高齢者の除雪を支援する者がいなくなって いる(図\ref{zogen})(図\ref{kore})。 \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 700 450,scale=0.4]{./pdf/jinko_kore.pdf} \caption{豪雪地帯の人口増減率} \label{zogen} \end{center} \end{figure} \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 700 400,scale=0.4]{./pdf/jinko_zogen.pdf} \caption{豪雪地帯の高齢化率} \label{kore} \end{center} \end{figure} このような背景の中、一人で除雪を行い、事故死するケースもある。NHKクローズアップ現代+「豪雪から高齢者を救え~相次ぐ除雪中の事故死~」で取り上げられた事例では一人暮らしのため自力で除雪を行い水路に転落し12時間以上経ってから発見された高齢者がいた~\cite{news_NHK}。 そのため高齢化・過疎化が与える除雪事故の影響は大きいものであると考えられる。また、除雪作業は高齢者に大きな負担になっていると考える。人力での除雪負担については次節で述べる。 \subsection{人力による除雪の負担} 除雪作業は身体的な負担が大きいことが森田らによって明らかにされている。除雪に必要な体力要素として特に筋力や脚力、持久性が重要であるとしている(森田・須田 2005)~\cite{2005233}。 事故を防ぐためには除雪作業を一人で行わないようにする仕組み作りや定期的な 休憩で未然に防ぐことはできる。しかし、過疎化により一人で除雪作業を行ったことで死亡した事故が起きていたり、地域に住む方々も共助による除雪が減っていたりする現状もある。このように豪雪地帯での過疎化が進んでいるため人手を増やすような対策は難しくなっている。 \section{除雪時の危険箇所共有} 以上のことから豪雪地帯の除雪作業は困難になってきていると考えられる。 屋根の雪下ろしをしている最中での転落や雪で見えなくなった水路への転落による死亡 事故も後を絶たない。 日向地区でも2017年3月に除雪中の水路への転落事故が起きている~\cite{nikko}。 しかし、事故が起きた場所の共有が十分に行われていないことが 同地域での聞き取り調査で明らかになっている~\cite{nouhau}。\par 本学プロジェクトでは、そういった事故が起きた場所を危険箇所として地理情報システムGISで危険箇所の情報をマップに表示している。 \section{ハザードマップ} 本システムは、除雪中の事故を未然に防ぐために開発しているため、ハザードマップとしての側面が強い。 ハザードマップについては、国土交通省国土地理院は以下のように述べている。\par 「『ハザードマップ』とは、一般的に自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路の防災関係施設の位置を表示した地図とされてます」~\cite{hamap}。 \par また、ハザードマップの例として酒田市河川氾濫時の危険区域を示した「酒田河川洪水ハザードマップ」(図\ref{saha})が挙げられる\cite{hazard}。 \begin{figure}[h] \begin{center} \includegraphics[bb=0 0 700 400,scale=0.7]{./pdf/sakata_hazard.pdf} \caption{酒田河川洪水ハザードマップ 出典:酒田市 2018} \label{saha} \end{center} \end{figure} こうしたハザードマップは地域に広く伝えることで作成したマップの認知度を広める際の問題点として榎村は、「配布・周知の方法の改善」を挙げている。榎村によると熊本県内の20市町村では、配布した洪水ハザードマップの定期的な再配布を行っておらず、また半数の市町村で転入者に対して配布を行っていない。そのためマップの存在を周知するための取り組みを工夫する必要があるとしている~\cite{hzrd}。 そのため本学プロジェクトでは、Webページで公開し、いつでも閲覧できるGISでマップを作成することで共有不足を改善することを目指した。 \chapter{先行事例} ここでは水路マップ作成における先行事例を紹介する。 \section{沼野夏生「多雪市街地のための除雪支援マップの試作−山形県新庄市のA町内会を対象に−」} 多雪地域に住む高齢者は除雪が出来ず、雪事故の増加により、住み慣れた場所に居続けることが困難になっている。そういった方々の除雪について共助(地域での助け合い)、公助(行政による除雪)の仕組みが必要となる。その際に共助を求めている方の情報の共有及び危険箇所の情報の共有は適切に行われていない。沼野は情報の共有が困難になっているA町内会にて調査を行い、得られた情報をGISを用いて表示する除雪支援マップを作成した。また、作成した除雪支援マップについてA町内会で発表を行った(沼野 2008)~\cite{2008}。 この事例でGISを使用したことはA町内会で共有する際に紙ベースの地図に比べて多量な情報を整理した形で表示できるので有用なツールになると考えられている。その一方で、このマップはインターネット上では公開を行っていないため、前述した榎村が挙げている問題点を解決するものではない。 \section{長野県宮田村「GIS水路マップ」} 長野県宮田村では、地域の水路の大きさや接続の状況などをまとめたマップを作成している。 大雨などの降雨時には、これを参考に、水回しなどを実際に行っていると村のホームページに掲載されている(宮田村役場 2018)。%~\cite{miyada}。 このマップも全地区に紙媒体で配布しているがインターネット上で公開を行っていないため、前述した榎村が挙げている問題点を解決するものではない。 \section{農研機構農村工学研究部門「Googleマイマップを用いた水利施設GISの構築手法マニュアル」} 農研機構農村工学研究部門では、GISを活用すると農業水利施設の管理の効率化を図ることができるが汎用型のGISの場合ある程度の専門知識がなくては使用することが難しいとしている(農研機構 2018)。%~\cite{G_mymap}。 そのため農研機構農村工学研究部門は、農業水利施設を管理している土地改良区の職員向けにGoogleマイマップを利用した水利施設管理マップ作成の手法についてまとめている。 しかし、マップ作成の促進を図っている一方で、使用されているマップの利用やガイドラインに関しては各自治体の責任となるため利用規約の遵守が求められている。 \bibliography{sanko} \end{document}