------------------------------------------------------------------------
野鳥用付加関数の作成方法
------------------------------------------------------------------------
【付加関数とは】
begin 型補完で、「tabular 環境を入力している時に、"{|c|c|c|}" と
か、また、table 環境の入力時に"[tbp]" とかも一緒に入力すればいいの
に」などと思うことはありませんか。もちろんこれを自動入力する関数は
簡単にサポートできるでしょう。
しかし、tabular 環境に限らず、LaTeX の環境の引数には、各人お決ま
りのフォーマットがあるものです。たとえば凝った表を書く時の tabular
環境の引数は、かなり複雑なので、上のような自動入力関数よりも、
"{@{\vrule width 1pt\ }|||@{\ \vrule width 1pt}}"
を挿入するだけの単純な関数のほうが、嬉しい人もいるでしょう。あるい
は、「そんなの要らない。他の tabular をコピーして来たほうが早い。」
と思う人もいるでしょう。
YaTeX の付加関数は、あらかじめ○○環境用のお仕着せの特別関数を用
意しておくのではなく、○○環境用の特別関数が欲しくなったら独自の関
数を定義する、というコンセプトに基づくもので、付加関数の登録のため
の手続きをすることなく、関数を定義したその瞬間から使えるようになり
ます。「必要なのは、defun だけ」です。
【準備】
さすがに、関数を書くだけでは使えません:-)。yatex-mode 起動時には、
その関数を定義したファイルがロードされていなくてはなりません。関数
を定義するファイル名を yatexadd.el(またはバイトコンパイルした形式
のyatexadd.elc)にし、そのファイルを load-path 中に置いておけば、
野鳥が自動的にロードします。それ以外のファイル名にする場合は、
yatex-mode-hook に付加関数を定義する Emacs-Lisp ファイルをロードす
るような仕掛けを書いておくのがよいでしょう。
【関数定義】
付加関数には、各LaTeXコマンドのオプション引数を返す形式のもの、
section型補完の引数を返すもの、の二種類があります。
前者は、以下の例のように、begin型補完では\begin{環境名}の直後に
付加する文字列、section型補完では LaTeX コマンド名と第一引数の間に
位置する文字列、maketitle型補完では LaTeX コマンド名の直後に位置す
る文字列を返すような関数です。便宜上この形の付加関数を、追加型付加
関数と呼ぶことにします。
(例) \begin{table}[ht] (付加関数名 YaTeX:table)
~~~~
\put(100,200){} (付加関数名 YaTeX:put)
~~~~~~~~~
\sum_{i=0}^{n} (付加関数名 YaTeX:sum)
~~~~~~~~~~
追加型付加関数は『LaTeXコマンド名の前に YaTeX: をつけた名前』で定
義します。
後者は、以下のようにsection型コマンドの引数となる文字列を返す
関数です。この形の付加関数を引数型付加関数と呼ぶことにします。
(例) \newcommand{\foo}{bar} (付加関数名 YaTeX::newcommand)
~~~~ ~~~
引数型付加関数は『LaTeXコマンド名の前に YaTeX:: をつけた名前』で定
義します。また引数型付加関数が呼ばれる時には何番目の引数を入力して
いるのかが引数として渡されます。したがって、引数型付加関数は整数の
引数を一つ取るものとして定義し、その引数の値により処理を決定するこ
とになります。
【定義例】
例えば、tabular環境のフォーマットとして、いつでも {|c|c|c|} を入
れるだけで良いのなら、
(defun YaTeX:tabular ()
"{|c|c|c|}")
とだけ書けばよく、前述の、複雑な定型 tabular フォーマットを挿入す
るための関数を定義する場合は次のようにします。
(defun YaTeX:tabular ()
"{@{\\vrule width 1pt\\ }|||@{\\ \\vrule width 1pt}}")
この時、Emacs-Lisp 中の文字列では、\ 自身は \\ と表記することなど
に注意して下さい。
また、{} の中を、補完時に直接キーボードから読み込ませたい時は、
(defun YaTeX:tabular ()
(concat "{" (read-string "Rule: ") "}"))
などとすれば良いでしょう。
次に、引数型付加関数として \newcommand の引数を読み込む関数を定
義する場合を例示します。\newcommand の第一引数は新たに定義するコマ
ンド名なので、必ず先頭に \ が来ます。第二引数はたいていの場合ミニ
バッファでは編集しづらいような複雑な定義を書くので、何も補完しない
方が良いでしょう。これを考慮して付加関数を定義すると以下のようなも
のになるでしょう。
(defun YaTeX::newcommand (n) ;nは引数の位置
(cond
((= n 1) ;第一引数ならコマンド名
(concat "\\" (read-string "Command: ")))
((= n 2) "") ;第二引数なら何も入れない
(t nil)))
なお、引数型付加関数が nil を返した場合は、通常の引数入力関数が呼
ばれます。
【呼ばれ方】
野鳥本体は、begin型補完とsection型補完、およびmaketitle型補完の
入力時に付加関数の存在を調べてから呼び出します。begin型補完の場合
\begin{環境名} が自動入力された直後に呼び出されます。section型補完
では第一引数の補完の直前、maketitle型補完の場合は、コマンド名の直
後(一つのスペースを挿入する直前)に呼び出されます。引数型付加関数は、
section型コマンドの引数の入力時にその都度呼ばれます。
【参考】
付加関数の定義の例を yatexadd.el に用意しました。実際に独自の付
加関数を定義する時の参考として下さい。
有用と思われる関数について、簡単に説明します。
・関数 YaTeX:read-position
引数 [] の中に入れてもよい文字を羅列した文字列。
説明 [htb] などのような location 指定を作成します。何も入力せず
リターンを押すと、[]自体も省略されます。[]の中に来るべき文
字が htbp に限られているなら、(YaTeX:read-position "htbp")
と呼び出します。
・関数 YaTeX:read-coordinates
引数 基本プロンプト, X座標プロンプト, Y座標プロンプト(全て省略可)
説明 「基本プロンプト X座標プロンプト:」というプロンプトを出し
て、X座標を読み込み、「基本プロンプト Y座標プロンプト:」を
出して、Y座標を読み込み、(X座標,Y座標) の様な形式を作成します。
何も入力せずリターンを押しても、(,)が返されます。
各プロンプトのデフォルトはそれぞれ、Dimension, X, Y です。
・関数 YaTeX:check-comletion-type
引数 'begin または、'section または、'maketitle
説明 付加関数が呼ばれる時に、行われている補完の形式が、引数で与
えたものであるかどうか調べ、そうでない場合にエラー終了する。
なお、変数 YaTeX-current-completion-type に現在の補完の型
を表わすシンボル(この関数の引数と同様)が格納されています。
【最後に】
快適な関数を定義したなら、そしてそれを公開してもよいと思われたな
ら、筆者までお送り下さい。次の yatexadd.el に取り込んで行きたいと
思います。
広瀬雄二
yuuji@ae.keio.ac.jp
pcs39334@asciinet.or.jp