diff --git a/c116041-thesis.pdf b/c116041-thesis.pdf index cc3aa31..b52f2de 100644 --- a/c116041-thesis.pdf +++ b/c116041-thesis.pdf Binary files differ diff --git a/c116041-thesis.tex b/c116041-thesis.tex index 1b59da7..c7b7dfd 100644 --- a/c116041-thesis.tex +++ b/c116041-thesis.tex @@ -83,7 +83,7 @@ \item 扱いにくい \par デジタル化した機器は,パソコンやスマートフォンなどの情報機器を所持しており,且つ扱える人でないと使うことは難しい。よって,情報機器に慣れていない人にとってWebハザードマップを使うことは困難を極めることとなる。また、Webハザードマップは使用頻度が少ないので慣れていないと難しい点も数多く存在する。 \item オフライン時に使いにくい \par - 情報機器はインターネット環境が無いとWebサイトを開くことができない。しかも電化製品であるため,停電や落雷,特にパソコン等は水に触れるなどのトラブルに弱く,簡単に使えなくなる。また,情報機器が壊れていたり,インターネットが使えない場合は意味をなさない。さらに,オフライン環境でも事前にダウンロードした地図を見る等でスマートフォンを使用することができるが,残存電力には限りがある。それでも,紙媒体は管理次第ではダウンロードしたデジタル地図よりも長く保つことができ,使いたい時にすぐ出して使えるので日本全国の自治体では現在も紙媒体のハザードマップを推奨している。 + 情報機器はインターネット環境が無いとWebサイトを開くことができない。しかも電化製品であるため,停電や落雷,特にパソコン等は水に触れるなどのトラブルに弱く,簡単に使えなくなる。また,情報機器が壊れていたり,インターネットが使えない場合は意味をなさない。さらに,オフライン環境でも事前にダウンロードした地図を見る等でスマートフォンを使用することができるが,残存電力には限りがある。それでも,紙媒体は管理次第ではダウンロードしたデジタル地図よりも長く保つことができ,使いたい時にすぐ出して使えるので日本全国の自治体では現在も紙媒体のハザードマップを推奨している[17]。 \end{description} \begin{center} \begin{figure}[htp] @@ -98,15 +98,15 @@ この「情報機器が扱いにくい人」とは高齢者を含めた情報機器を扱うことに難がある人の総称である。彼らはインターネットやスマートフォンなどの情報機器を扱うのが難しいが,大多数は紙媒体を扱うことが可能である。 紙媒体の地図であれば役所に行けば入手することができる。また,インターネット上でもPDFとして印刷することができる。しかし,役所に行く方法無かったり,印刷する機会があったとしても印刷の方法が理解しがたい場合もある。そこで,印刷機能を実装し,なおかつ簡単な表記と、印刷方法が書かれた説明書を利用者の閲覧が容易な場所に貼り付ければ,紙媒体のハザードマップの浸透に繋げることができると考える。しかし,視覚障害者には,ハザードマップを扱うことができないため,音声による解説機能を実装する必要がある。 \item 夏や冬の避難情報 \par - 山形県は夏と冬の環境の差が激しい地域である。とりわけ酒田市は夏場は40度近くの気温、冬場は海岸からの強い風があり,路面も凍結するため危険な場所となる。そこで,冷房や暖房を備えた避難所を切り替えることができる機能が実装されたハザードマップを作成する必要があると考える。 + 山形県は夏と冬の環境の差が激しい地域である[18]。とりわけ酒田市は夏場は40度近くの気温、冬場は海岸からの強い風があり,路面も凍結するため危険な場所となる。そこで,冷房や暖房を備えた避難所を切り替えることができる機能が実装されたハザードマップを作成する必要があると考える。 \end{description} \chapter{提案} \def\baselinestretch{0.60} 第1章で挙げた背景と目的をふまえ,酒田での地震災害によるリスクを軽減することを目的とし,本研究ではハザードマップを作成する。 -酒田市は江戸時代から地震が観測されており,震源も現代の断層と同じものであるため,江戸時代から現代にかけての地震の記録をアーカイブ上にし,被害の大小を色分けした地図を作成する。幅広い年齢層の人が見やすいように津波や洪水,土砂災害地域,避難所をマーカーで表す。本研究では環境変化に適応した地図を作成するため,国土交通省の地図を用いる。 +酒田市は江戸時代から地震が観測されており,震源も現代の断層と同じものであるため,江戸時代から現代にかけての地震の記録をアーカイブ上にし,被害の大小を色分けした地図を作成する。幅広い年齢層の人が見やすいように津波や洪水,土砂災害地域,避難所をマーカーで表す。本研究では環境変化に適応した地図を作成するため,国土交通省の地図を用いる[19]。 \begin{description} \item 国土交通省の地図を元にしたハザードマップ構成 \par -国土交通省の地図に基づいて、環境と地形に見合った地図を作成する[17]。 国土交通省のハザードマップは過去のデータと科学的な知見をもとに作成されているため,信頼性が高い。 +国土交通省の地図に基づいて、環境と地形に見合った地図を作成する[20]。 国土交通省のハザードマップは過去のデータと科学的な知見をもとに作成されているため,信頼性が高い。 \item 高齢者にも優しい設計 \par 高齢者が扱うことを考慮し,文字を大きく表示させる。また,スマートフォンなどの情報機器が扱えない人や,災害時の停電で活用されることも考慮し,印刷機能を実装する。 \item 避難所の場所を特定するのが簡単にできる機能 \par @@ -120,10 +120,10 @@ 本研究と同じくハザードマップの作成を行っている先行のサービスと本研究の比較を行う。 \begin{description} \item[酒田市のハザードマップ] - 酒田市役所では、洪水や津波のハザードマップの他に、地震の震度の予想分布図を表した「ゆれやすさマップ\footnote[6]{\url{https://www.city.sakata.lg.jp/jyutaku/jyutaku/taishin/taishinkaisyukeikaku.files/yureyasusa-map-sakata-A3print.pdf}}」を作成している[2]。しかし、酒田市の職員の防災意識は2018年度行政監査で、「相当低い」と指摘され4月16日から抜本的な改善を求められた[18]。しかし、作成費用がかさむことと、「浸水想定地域\footnote[9]{あらかじめダメージを被るであろう地域}」は対象外とされていないため、未記載の地域もあるという弱点もある。 + 酒田市役所では、洪水や津波のハザードマップの他に、地震の震度の予想分布図を表した「ゆれやすさマップ\footnote[6]{\url{https://www.city.sakata.lg.jp/jyutaku/jyutaku/taishin/taishinkaisyukeikaku.files/yureyasusa-map-sakata-A3print.pdf}}」を作成している[2]。しかし、酒田市の職員の防災意識は2018年度行政監査で、「相当低い」と指摘され4月16日から抜本的な改善を求められた[19]。しかし、作成費用がかさむことと、「浸水想定地域\footnote[9]{あらかじめダメージを被るであろう地域}」は対象外とされていないため、未記載の地域もあるという弱点もある。 \item[Google Map] Google社\footnote[7]{Google crisis Map https://google.org/crisismap/japan}では「防災マップ」「災害情報マップ」を提供している。GPSやポリゴンを用いた震度分けのほか、気象情報を閲覧することが可能である。しかも高速で柔軟性のあるGoogle Map APIを地図のソースとして利用しているため、完璧なハザードマップのように思える。 - しかし、2019年3月に「新しいGoogle Mapへの移行」として、それまで利用していた株式会社ゼンリンからの情報提供をやめて、独自のソースに切り替えたため、「Google Mapが劣化した」、「地図の表示がおかしい」という意見が増えた。[19] + しかし、2019年3月に「新しいGoogle Mapへの移行」として、それまで利用していた株式会社ゼンリンからの情報提供をやめて、独自のソースに切り替えたため、「Google Mapが劣化した」、「地図の表示がおかしい」という意見が増えた。[20] \item[Yahoo!ハザードマップ] Yahoo!JAPAN\footnote[8]{大雨警戒レベルマップ \url{https://weather.yahoo.co.jp/weather/levelmap/?dosha=on}}では、インターネット上でリアルタイムの災害情報を掲示している。江戸時代までの過去の災害情報を記載していたり、レーダーによる雨雲の様子を表示できたりしている。また地震の他に、高潮や火山噴火を含む8つの災害のハザードマップを展開している。弱点となるような問題点は見当たらないが、季節による避難所の表示は確認されていない。 \item[株式会社ゼンリンのハザードマップ] @@ -172,7 +172,7 @@ leaflet-omnivore\footnote[6]{Leafletの機能の一種で、外部の地図データをLeaflet内に読み込むのに用いられている。}を用いて外部の地図データを自分の地図データとして用いる。外部のデータはShapefileとよばれる状態でダウンロードされることが多いため、KMLファイルに直す必要がある。これはleaflet-omnivoreがKMLファイルしか読み込むことができない性質による。 \section{位置情報読み込み機能} \subsection{位置情報について} -位置情報とは、携帯端末等で利用者が所在する現在地を取得し、状況に応じた情報を提供してくれるソフトウェアサービスの一種である。Web地図サービスやゲームなどに応用されているが、位置情報を読まれ、追跡される危険性もある[1]。本研究のハザードマップには情報端末機器使用者の位置情報が分かる位置情報サービスが備わっており、図3.3では「現在地」と表示しているマーカーが現在地を表している。なお、この位置情報を読み取る機能は本研究の要といえる機能であるため、順を追って説明することとする。 +位置情報とは、携帯端末等で利用者が所在する現在地を取得し、状況に応じた情報を提供してくれるソフトウェアサービスの一種である。Web地図サービスやゲームなどに応用されているが、位置情報を読まれ、追跡される危険性もある[18]。本研究のハザードマップには情報端末機器使用者の位置情報が分かる位置情報サービスが備わっており、図3.3では「現在地」と表示しているマーカーが現在地を表している。なお、この位置情報を読み取る機能は本研究の要といえる機能であるため、順を追って説明することとする。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.3]{gps.png} @@ -249,18 +249,19 @@ \subsection{実験方法} 実際に地震が発生したことを想定して実験を行う。想定した地震は「震央が山形県沖北緯38.6度、東経139.5度、最大震度7、震源の深さは14km、津波の高さおよそ2m」とする。被験者には実際にURLを入力、あるいはQRコードを読み取ってもらい、5分ほど使用させ、評価と意見を言ってもらうという方法を取った。 \section{評価} -これらの意見を元にグラフを作った。 -\begin{center} - \begin{figure}[htp] - \includegraphics[clip,scale=1.1]{grafbar.png} - \caption{被験者の感想を円グラフとして表す} - \end{figure} -\end{center} +これらの意見を元にグラフを作成したので、このグラフを使って本研究の良い点と足りない点を説明する\ref{図6.1}。 一番多かったのが「津波到達範囲の表示がされていて、避難所が危険かどうか分かりやすい」という評価と、「地図の表示が分からない」という意見であった。 まずひとつ目は、津波の到達する可能性がある範囲が目立つ青色で表示されていて分かりやすい。そして、津波や土砂崩れの危険がある避難所が色で表されていたので、どこに避難すれば良いのかが理解できる。という評価が多かった。 二つ目は、「マーカーが分かりにくい」という意見が多かった。マーカーが表しているのが避難所というのが理解できるが、色が異なるのはなぜなのかが分からないという意見と、初めに何かマーカーに関する記載が欲しいという意見が多かった。 +\begin{center} + \begin{figure}[htp] + \includegraphics[clip,scale=0.9]{grafbar.png} + \caption{\label{被験者の感想を棒グラフとして表す}} + \end{figure} +\end{center} + \section{まとめ} -本研究の実験において,被験者は「地図の表示がわかりにくい」と意見を出していた。そこで私はこれらの意見に対し,「ハザードマップは防災上必要とメディアが話していても,一般人は実際にどう使用すればいいのか分からない」という仮説を打ち立てた。解説書を載せても,見る側が理解できるように避難所の危険度を色で表しても、ハザードマップの使い方が分からなければ意味がない。そこで、解説書を簡易に表すようにして、文字を大きくし、スマートフォンに特化した画面に整えることで、 +本研究の実験において,被験者は「地図の表示がわかりにくい」と意見を出していた。そこで私はこれらの意見に対し,「ハザードマップは防災上必要とメディアが話していても,一般人は実際にどう使用すればいいのか分からない」という仮説を打ち立てた。解説書を載せても,見る側が理解できるように避難所の危険度を色で表しても、ハザードマップの使い方が分からなければ意味がない。そこで、解説書を簡易に表すようにして、文字を大きくし、日本国内で所持数の多いIphone8の画面に対応するように整えた。工夫した点は、一番下にあった解説書を上に引き上げて、
を用いて折りたためるようにした点である。これを用いることで、長い文章や大きい画像でも縮小させることができる。 \chapter{今後の展望} 本研究では範囲を酒田市のみと定めてハザードマップを作成したが,山形県全域を含めたハザードマップを作成していきたいと考えている。特に内陸では火災や土砂災害が二次災害として発生する傾向にあるのでこれらを考慮したマップを作成することを考えている。また,今回使用した位置情報読み取り機能は自然災害だけでなく,行方不明者を捜索する際に,スマートフォン等に埋め込むことによって行方不明者を軽減することができると考えられる。警察庁の統計によれば行方不明者は2018年時点で男女約9万人いるとされ,20代が多いといわれている[25]。20代であればスマートフォンを所持している可能性が高いため,彼らの捜索にも活かされるだろうと考えられる。 @@ -306,21 +307,25 @@ \bibitem[14]{key14}木 康弘(2018)「科学研究費助成事業 研究成果報告書」,名古屋大学,pp.3, \url{https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-15H02959/15H02959seika.pdf} \bibitem[15]{key15}佃為成(2007)『地震予知の最新科学』,p.74-91, SoftBank Creative. \bibitem[16]{key16}佃為成(2007)『地震予知の最新科学』,p.108-124, SoftBank Creative. -\bibitem[17]{key17}河北新報(2019)「酒田市職員の防災意識「相当低い」 市監査委が抜本改善求める」,河北新報オンラインニュース,2019-04-17, +\bibitem[17]{key17}国土交通省(2016),「水害ハザードマップの手引き」, + \url{https://www.mlit.go.jp/river/basic-info/jigyo-keikaku/saigai/tisiki/hazardmap/suigai-hazardmap-tebiki-201604.pdf} +\bibitem[18]{key18}山形県地方気象台(2015)「山形県の気象特性」,\url{https://www.jma-net.go.jp/yamagata/kishou_tokusei/kishoutokusei_top.html} +\bibitem[19]{key19}国土交通省(2019)「国土地理院」https://www.gsi.go.jp/ +\bibitem[20]{key20}河北新報(2019)「酒田市職員の防災意識「相当低い」 市監査委が抜本改善求める」,河北新報オンラインニュース,2019-04-17, \url{https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201904/2019041751014.html}(参照2019-12-04) -\bibitem[18]{key18}小口貴宏(2019)「日本のGoogleマップが近日刷新 徒歩ナビゲーションなどが進化」,engadget日本版,\url{https://japanese.engadget.com/2019/03/06/google/} -\bibitem[19]{key19}国土交通省(2019)「わがまちハザードマップ」 +\bibitem[21]{key21}小口貴宏(2019)「日本のGoogleマップが近日刷新 徒歩ナビゲーションなどが進化」,engadget日本版,\url{https://japanese.engadget.com/2019/03/06/google/} +\bibitem[22]{key22}国土交通省(2019)「わがまちハザードマップ」 \url{https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/bousaimap/index.html?code=1}(参照2019-12-11) -\bibitem[20]{key20}Android(2019)'Android Studio',Android Developers, +\bibitem[23]{key23}Android(2019)'Android Studio',Android Developers, \url{https://developer.android.com/studio?hl=ja}(参照2019-12-26) -\bibitem[21]{key21}Apple(2019)'Xcode11',Apple Developer, +\bibitem[24]{key24}Apple(2019)'Xcode11',Apple Developer, \url{https://developer.apple.com/xcode/}(参照2019-12-26) -\bibitem[22]{key22}Facebook(2019)'React Native 0.61', +\bibitem[25]{key25}Facebook(2019)'React Native 0.61', \url{https://facebook.github.io/react-native/}(参照2019-12-26) -\bibitem[23]{key23}Microsoft(2016)'9 Visual formatting model',W3C Recommendation,\url{https://www.w3.org/TR/CSS2/visuren.html#viewport}(参照2019-12-26) -\bibitem[24]{key24}Chris Lilley(2018)'CSS Fonts 3 is a W3C Recommendation',W3C, +\bibitem[26]{key26}Microsoft(2016)'9 Visual formatting model',W3C Recommendation,\url{https://www.w3.org/TR/CSS2/visuren.html#viewport}(参照2019-12-26) +\bibitem[27]{key27}Chris Lilley(2018)'CSS Fonts 3 is a W3C Recommendation',W3C, \url{https://www.w3.org/blog/2018/09/css-fonts-3-is-a-w3c-recommendation/}(参照2019-12-26) -\bibitem[25]{key25}警察庁生活安全局生活安全企画課(2019),「平成30年における行方不明者の状況」,警察庁,pp.1-7 +\bibitem[28]{key28}警察庁生活安全局生活安全企画課(2019),「平成30年における行方不明者の状況」,警察庁,pp.1-7 \url{ https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/H30yukuehumeisha.pdf} \end{thebibliography}