diff --git a/c116041-thesis.pdf b/c116041-thesis.pdf index cf4bc32..f4cfbd4 100644 --- a/c116041-thesis.pdf +++ b/c116041-thesis.pdf Binary files differ diff --git a/c116041-thesis.tex b/c116041-thesis.tex index ae57ae9..73c1729 100644 --- a/c116041-thesis.tex +++ b/c116041-thesis.tex @@ -25,7 +25,7 @@ \maketitle \begin{abstract} \begin{center}概要\end{center} -ハザードマップのハザード(hazard)とは「危険,災害」を表す英単語であり,「ハザードマップ」は災害が発生する地帯の地図を表す。その中で地震の規模と震度による予想を地図上に表した地図が「地震ハザードマップ」である。ハザードマップの歴史は古く,アメリカの地震工学者カール・アリン・コーネルが1968年に地震ハザード分析を提唱して以来,地震の震度や規模を統計的に測定することが可能となった。日本で現在のようなハザードマップが作成されるのは1994年からである。当時は紙ベースだったので,保管や配布の方法が問題視されていた。2000年に有珠山が噴火した際にハザードマップを用いた避難を行い,人的被害を減らすことができた。それ以来,より本格的な研究が行われるようになった。2011年からは大手WebGISであるGoogle Mapが参入し,重要な情報を多く入手することが可能となった。 津波のハザードマップと兼ねている地震ハザードマップもある。本研究ではこのハザードマップを作成し,この地図の社会的意義を発見することを目的としている。2011年の東日本大震災以降,日本に住む人々は災害に対する恐れと,防災や減災に関心を持つようになった。ただし,この地図が万能の安全マップで,これを持っているだけで救われるという保証は無い。なので,本研究では季節変化による環境変化に対応したハザードマップを作成し,実験を行った結果とそれに対する考察について説明する。(621文字) +ハザードマップのハザード(hazard)とは危険や災害を表す英単語であり,ハザードマップはその災害が発生する可能性がある地帯の地図を表す。その中で地震の規模と震度による予想を地図上に表した地図が「地震ハザードマップ」である。ハザードマップの歴史は古く,アメリカの地震工学者カール・アリン・コーネルが1968年に地震ハザード分析を提唱して以来,地震の震度や規模を統計的に測定することが可能となった。日本で現在のようなハザードマップが作成されるのは1994年からである。当時は紙ベースだったので,保管や配布の方法が問題視されていた。2000年に有珠山が噴火した際にハザードマップを用いた避難を行い,人的被害を減らすことができた。それ以来,より本格的な研究が行われるようになった。2011年からは大手WebGISであるGoogle Mapが参入し,重要な情報を多く入手することが可能となった。WebGISとは,Web上での地理情報の共有と利用を実現させる統合環境のことである。 津波のハザードマップと兼ねている地震ハザードマップもある。本研究ではこのハザードマップを作成し,この地図の社会的意義を発見することを目的としている。2011年の東日本大震災以降,日本に住む人々は災害に対する恐れと,防災や減災に関心を持つようになった。ただし,この地図が万能の安全マップで,これを持っているだけで救われるという保証は無い。なので,本研究では季節変化による環境変化に対応したハザードマップを作成し,実験を行った結果とそれに対する考察について説明する。(667文字) \end{abstract} \setcounter{tocdepth}{0} \thispagestyle{empty} @@ -41,7 +41,7 @@ \section{背景} \fontsize{11pt}{20pt}\selectfont 2011年に東日本大震災が発生して以来,我が国は3度の巨大地震に巻き込まれてきた[1]。東北公益文科大学の位置する山形県庄内地区でも地震やそれによって引き起こされる津波とは無縁ではなく,2019年6月に起きた山形県沖地震のような地震災害も発生している。特に酒田は陸と海の活断層に囲まれているため,巨大地震が発生する可能性が高い[2]。巨大な地震は津波や火災などの二次災害を引き起こし,社会の存続に大きな障害を残す性質を持っている。 - また,地震以外にも2019年10月に発生した台風19号において,ハザードマップの使用方法と正確さが再び注目されている[3]。東京都と千葉県にはそれぞれ台風のハザードマップが存在しているものの,インターネット上での公表が遅れたため,避難の仕方が分からない,避難場所の位置が分からない,などのトラブルが発生した[4]。これらのトラブルを二度と起こさないようにするにはどのような対策が必要なのかを考える。 + また,地震以外では2019年10月に発生した台風19号において,ハザードマップの使用方法と正確さが再び注目されている[3]。東京都と千葉県にはそれぞれ台風のハザードマップが存在しているものの,インターネット上での公表が遅れたため,避難の仕方が分からない,避難場所の位置が分からない,などのトラブルが発生した[4]。これらのトラブルを二度と起こさないようにするにはどのような対策が必要なのかを考える。 %\begin{center} % \begin{figure}[htp] @@ -51,14 +51,14 @@ %\end{center} \section{目的} -本研究では,防災意識を高めるためにハザードマップを作成することが目的である。 +本研究では,防災意識を高めるためにハザードマップを作成することを目的とする。 既存のハザードマップは自然災害のリスクを予測でき,紙情報でしか調べることができなかった情報をインターネットで気軽に詳細な情報が入手できるようになった。しかし,自然災害はあらかじめ回避,抑制することもできない。そのため,事前に避難する対策を進めていく必要がある。避難所の情報を増やしたハザードマップを作成するしかないが,避難所には多種多様な人が集まる。高齢者,障がい者,外国人,子供,または傷病者である。  特に,高齢者や傷病者は動きが遅く,環境の変化にも弱いため彼らのことも考慮したハザードマップを作成する必要がある。 また,ハザードマップだけでは人を救うことは困難である。なぜなら,防災意識を高めるだけでは実際の活動に活かすことができないからである。ハザードマップは,地図を元にどのような救助活動を行うかを示した地図であるため,安全を左右するのは,この地図を元に活動する作業員の技量に求められてくる。  \subsubsection{現状}日本海側は太平洋側と比べて夏と冬の季節変化が激しい土地柄であるため,ハザードマップ通りに避難が進まないのが現状である。東日本大震災では,夏場は熱中症と水分不足に苦しみ,冬場は低体温症やインフルエンザに苦しむ人が多かった[5]。そのため季節ごとに人が快適に暮らせる環境を持った避難所を季節ごとに表し,切り替える機能をつけた地図が必要と考える。また,Webハザードマップを扱うことが困難な人でも扱えるようにする配慮が必要である。自然災害が発生すると行方不明者の数も増える。警察庁の統計によれば行方不明者は2018年時点で男女約9万人いるとされ,20代が多いといわれている[6]。 %\chapter{ハザードマップの概要と問題点} \section{災害地域としての庄内地域} -酒田市を含む山形県は宮城県や福島県に比べて地震が少ない。2011年の東日本大震災では, 宮城県が2万5949人の死者と行方不明者を出す甚大な被害を被ったのに対し,山形県及び庄内地域は宮城県や福島県に比べて大きな影響は受けなかった[7]。しかし,庄内地域で発生した震度6強以上の地震は18世紀から現在にかけて5回ほど発生しており,決して少なくないことが分かる[2]。酒田市は日本海に面しており,日本海東縁変動帯が縦に伸びているので海溝型の地震とは無縁ではないことが分かる[8]。また,真室川町から酒田市東部,鮭川村にかけて庄内東縁断層帯と呼ばれる断層帯が横に伸びているので内陸型地震も発生する。事例として,1780年にはマグニチュード6.5の内陸型地震が発生し,酒田市で土蔵,家が潰れ,死者2人という被害が出ている[9]。 +酒田市を含む山形県は宮城県や福島県に比べて地震が少ない。2011年の東日本大震災では, 宮城県が2万5949人の死者と行方不明者を出す甚大な被害を被ったのに対し,山形県及び庄内地域は宮城県や福島県に比べて大きな影響は受けなかった[7]。しかし,庄内地域で発生した震度6強以上の地震は18世紀から現在にかけて5回発生している。なので,決して少なくないことが分かる[2]。酒田市は日本海に面しており,日本海東縁変動帯が縦に伸びているので海溝型の地震とは無縁ではないことが分かる[8]。また,真室川町から酒田市東部,鮭川村にかけて庄内東縁断層帯と呼ばれる断層帯が横に伸びているので内陸型地震も発生する。事例として,1780年にはマグニチュード6.5の内陸型地震が発生し,酒田市で土蔵,家が潰れ,死者2人という被害が出ている[9]。 \section{国土地理院の地殻変動マップについて} 国土地理院では,2005年3月から地殻変動情報を記載したマップを作成,運営しており,本稿執筆時には,2018年4月24日のデータが最新とされている\footnote[1]{国土地理院 \url{https://www.gsi.go.jp/kanshi/}}。過去の地殻の活動や火山の地磁気が記載されているが,Windowsでしか動作しないため,他のOSでは地殻変動の動きを観測することは不可能である。 \subsection{既存の研究の問題点} @@ -70,7 +70,7 @@ \item 見落としがある \par これは2016年に発生した熊本地震での事例である。熊本地震では,西原村と益城町では震度7を記録した。しかし行政から出されたハザードマップには西原村と益城町が震央の上にあることが明記されておらず,対策もできないため,被害を被ってしまった[14]。 \item 関心が薄い \par - ハザードマップは防災訓練や,実際に発生した場合以外は使用頻度が少ないので,主に若い年代層の認知度は低いと見られている(図1.1)。また,実際に地震が発生して無事だった場合,災害の強さを自分勝手な判断で分析してしまい,安心してしまう住民もいる[15]。 + ハザードマップは防災訓練や,実際に発生した場合以外は使用頻度が少ないので,主に若い年代層の認知度は低いと見られている(図1.1)。また,実際に地震が発生して無事だった場合,災害規模を自分勝手な判断で分析してしまい,安心してしまう住民もいる[15]。 \end{enumerate} \begin{center} \begin{figure}[htp] @@ -92,7 +92,7 @@ 1章の通り,ハザードマップには数多くの問題点があることを理解した。では,どのような打開策が求められるのかをここに表す。本章では,次世代のハザードマップに求められるべきアイディアを示す。 \begin{itemize} \item バリアフリー対応 \par -「情報機器が扱いにくい人」とは高齢者を含めた情報機器を扱うことに難がある人と表すことにする。彼らの中にはインターネットやスマートフォンなどの情報機器を扱うのが難しい人も多いが,大多数は紙媒体であれば扱うことが可能である。 +本研究での「情報機器が扱いにくい人」とは高齢者を含めた情報機器を扱うことに難がある人と表すことにする。彼らの中にはインターネットやスマートフォンなどの情報機器を扱うのが難しい人も多いが,大多数は紙媒体であれば扱うことが可能である。 紙媒体の地図であれば役所に行けば入手することができる。また,インターネット上でも印刷することができる。しかし,役所に行く方法がなかったり,印刷の方法が分からない場合もある。そこで,印刷機能を実装し,なおかつ簡単な表記と,印刷方法が書かれた説明書を利用者の閲覧が容易な場所に貼り付ければ,紙媒体のハザードマップの浸透に繋げることができると考える。しかし,視覚障害者には,ハザードマップを扱うことができないため,音声による解説機能を実装する必要がある。 \item 夏や冬の避難情報 \par 山形県は夏と冬の環境の差が激しい地域である[17]。とりわけ酒田市は夏場は40度近くの気温,冬場は海岸からの強い風があり,路面も凍結するため危険な場所となる。そこで,冷房や暖房を備えた避難所を切り替えることができる機能が実装されたハザードマップを作成する必要があると考える。 @@ -246,20 +246,20 @@ \section{実験方法} 実際に地震が発生したことを想定して実験を行う。想定した地震は「震央が山形県沖北緯38.6度,東経139.5度,最大震度7,震源の深さは14km,津波の高さおよそ2m」とする。被験者には実際に本研究のシステムのURLを入力,あるいはQRコードを読み取ってもらい,5分ほど使用させ,評価と意見を言ってもらうという方法を取った。 \section{評価} -これらの意見を元にグラフを作成したので,このグラフを使って本研究の良い点と足りない点を説明する(図6.1)。 +これらの意見を元にグラフを作成したので,このグラフを使って本研究のよい点と足りない点を説明する(図6.1)。 また,この実験で得られた評価は以下に示すこととする。 \subsection{評価} \begin{itemize} - \item[1]津波到達範囲が表示されており,避難所を見分けることができる。 - \item[2]津波や土砂災害が発生する可能性のある避難所を見分けられる。 - \item[3]動きが快適で使いやすい。 + \item[1]津波到達範囲が表示されており,避難所を見分けることができる + \item[2]津波や土砂災害が発生する可能性のある避難所を見分けられる + \item[3]動きが快適で使いやすい \end{itemize} \subsection{意見} \begin{itemize} \item[1]マーカーが分かりづらい \item[2]文字が小さくてわかりにくい \item[3]わかりやすい解説書がほしい -\item[4]スマートフォンに対応されていない。 +\item[4]スマートフォンに対応されていない \end{itemize} 評価で一番多かったのが「津波到達範囲の表示がされていて,避難所が危険かどうか分かりやすい」だった。意見では,「マーカーが分かりにくい」が多かった。 \begin{center} @@ -284,7 +284,6 @@ \end{figure} \end{center} \vspace{-10pt} -\subsection{URL} \url{https://koeki-soturon.github.io/hazard-map/map.html} \begin{thebibliography}{99}