diff --git a/c116041-thesis.tex b/c116041-thesis.tex index 0240f88..9653fab 100644 --- a/c116041-thesis.tex +++ b/c116041-thesis.tex @@ -33,11 +33,11 @@ \chapter{序文} \def\baselinestretch{0.85} - 本研究に至った理由をこの章で解説する。自然災害へのリスクを減らすには,事前に準備をしておくことが重要である。ハザードマップもまた,自然災害へのリスクを事前に察知し,防災意識を高めるだけのアイテムに過ぎない。また,酒田市は夏と冬が厳しく,地震が発生した際のことを考えるには,環境の変化も考慮する必要がある。どう使うかを考えるよりも,ハザードマップを地域の環境にどう適応するかが望まれている。 + 本研究に至った理由をこの章で解説する。自然災害へのリスクを減らすには,事前に準備をしておくことが重要である。ハザードマップもまた,自然災害へのリスクを事前に察知し,防災意識を高めるだけのアイテムに過ぎない。また,酒田市は夏と冬が厳しく,地震が発生した際のことを考えるには,環境の変化も考慮する必要がある。どう使うかを考えるよりも,ハザードマップを地域の環境にどう適応するかが望まれている。 \section{背景} \fontsize{11pt}{20pt}\selectfont - 2011年に東日本大震災が発生して以来,我が国は3度の巨大地震に巻き込まれてきた[1]。東北公益文科大学の位置する山形県庄内地区でも地震やそれによって引き起こされる津波とは無縁ではなく,2019年6月に起きた「山形県沖地震」のような地震災害も発生している。特に酒田は陸と海の活断層に囲まれているため,巨大地震が発生する可能性が高い[2]。巨大な地震は津波や火災などの二次災害を引き起こし,社会の存続に大きな障害を残す性質を持っている。 - また,地震以外にも2019年10月に発生した「台風19号」において,ハザードマップの使用方法と正確さが再び注目されている[3]。東京都と千葉県にはそれぞれ台風のハザードマップが存在しているものの,インターネット上での公表が遅れたため,避難の仕方が分からない,避難場所の位置が分からない,などのトラブルが発生した[4]。これらのトラブルを二度と起こさないようにするにはどのような対策が必要なのかを考える。 + 2011年に東日本大震災が発生して以来,我が国は3度の巨大地震に巻き込まれてきた[1]。東北公益文科大学の位置する山形県庄内地区でも地震やそれによって引き起こされる津波とは無縁ではなく,2019年6月に起きた「山形県沖地震」のような地震災害も発生している。特に酒田は陸と海の活断層に囲まれているため,巨大地震が発生する可能性が高い[2]。巨大な地震は津波や火災などの二次災害を引き起こし,社会の存続に大きな障害を残す性質を持っている。 + また,地震以外にも2019年10月に発生した「台風19号」において,ハザードマップの使用方法と正確さが再び注目されている[3]。東京都と千葉県にはそれぞれ台風のハザードマップが存在しているものの,インターネット上での公表が遅れたため,避難の仕方が分からない,避難場所の位置が分からない,などのトラブルが発生した[4]。これらのトラブルを二度と起こさないようにするにはどのような対策が必要なのかを考える。 %\begin{center} % \begin{figure}[htp] @@ -51,14 +51,14 @@ 現代のハザードマップは自然災害のリスクを予測でき,それまでは紙情報でしか調べることができなかった情報をインターネットで気軽に詳細な情報が入手できるようになった。自然災害はあらかじめ回避することも,抑制することもできない。そのため,事前に避難する対策を進めていく必要がある。避難所の情報を増やしたハザードマップを作成するしかないが,避難所には多種多様な人が集まる。高齢者,障がい者,外国人,子供,または傷病者である。  特に,高齢者や傷病者は動きが遅く,環境の変化にも弱いためそれらのことも考慮したハザードマップを作成する必要がある。 また,ハザードマップだけでは人を救うことは困難である。なぜなら,防災意識を高めるだけでは実際の活動に活かすことができないからである。ハザードマップは,地図を元にどのような救助活動を行うかを示した地図であるため,安全を左右するのは,この地図を元に活動する作業員の技量に求められてくる。 - \subsubsection{現状}根拠として,日本海側は太平洋側と比べて夏と冬の季節変化が激しい土地柄であるため,ハザードマップ通りに避難が進まないのが現状である。東日本大震災では,夏場は熱中症と水分不足に苦しみ,冬場は低体温症やインフルエンザに苦しむ人が多かった[5]。そのため季節ごとに人が快適に暮らせる環境を持った避難所を季節ごとに表し,切り替える機能をつけた地図が必要と考える。また,Webハザードマップを扱うことが困難な人でも扱えるようにする配慮が必要である。自然災害が発生すると行方不明者の数も増える。警察庁の統計によれば行方不明者は2018年時点で男女約9万人いるとされ,20代が多いといわれている[6] + \subsubsection{現状}根拠として,日本海側は太平洋側と比べて夏と冬の季節変化が激しい土地柄であるため,ハザードマップ通りに避難が進まないのが現状である。東日本大震災では,夏場は熱中症と水分不足に苦しみ,冬場は低体温症やインフルエンザに苦しむ人が多かった[5]。そのため季節ごとに人が快適に暮らせる環境を持った避難所を季節ごとに表し,切り替える機能をつけた地図が必要と考える。また,Webハザードマップを扱うことが困難な人でも扱えるようにする配慮が必要である。自然災害が発生すると行方不明者の数も増える。警察庁の統計によれば行方不明者は2018年時点で男女約9万人いるとされ,20代が多いといわれている[6] %\chapter{ハザードマップの概要と問題点} \section{災害地域としての庄内地域} 酒田市を含む山形県は宮城県や福島県に比べて地震が少ない。2011年の東日本大震災では,宮城県が2万5949人の死者と行方不明者を出す甚大な被害を被ったのに対し,山形県及び庄内地域は宮城県や福島県に比べて大きな影響は受けなかった[7]。しかし,庄内地域で発生した震度6強以上の地震は18世紀から現在にかけて5回ほど発生しており,決して少なくないことが分かる[2]。酒田市は日本海に面しており,日本海東縁変動帯が縦に伸びているので海溝型の地震とは無縁ではないことが分かる[8]。また,真室川町から酒田市東部,鮭川村にかけて庄内東縁断層帯と呼ばれる断層帯が横に伸びているので内陸型地震も発生する。事例として,1780年にはマグニチュード6.5の内陸型地震が発生し,酒田市で土蔵,家が潰れ,死者2人という被害が出ている[9]。 \section{国土地理院の地殻変動マップについて} 国土地理院では,2005年3月から地殻変動情報を記載したマップを作成,運営しており,2018年4月24日のデータが最新とされている\footnote[1]{国土地理院 \url{https://www.gsi.go.jp/kanshi/}}。過去の地殻の活動や火山の地磁気が記載されているが,Windowsでしか動作しないため,他のOSでは地殻変動の動きを観測することは不可能である。 \subsection{既存の研究の問題点} -ハザードマップは東日本大震災以降に大幅な見直しがなされたが,地震ハザード評価\footnote[2]{気象庁が行っている,ある地点に対して影響を及ぼす全部の地震を想定して,その地点が被災した後の被害規模を予測する評価方法。}による被害の予測結果に依存しすぎて予測の不確実性が考慮できていなかったこと,地質条件や地形に合わせた避難の仕方が未記載だったことが2016年に明らかとなった[10]。特に,地震や津波のハザードマップは災害像を予想しにくいため,発生源や断層\footnote[3]{地震の予測において,どこで大地震が発生するのか把握する基準となる地層[5][11]。},地域防災単位,過去に発生した地震の情報等の表記が必要である。また,行政や非営利団体による斡旋が上手く行かず,ハザードマップの認知度が極めて低いという問題点もある。 +ハザードマップは東日本大震災以降に大幅な見直しがなされたが,地震ハザード評価\footnote[2]{気象庁が行っている,ある地点に対して影響を及ぼす全部の地震を想定して,その地点が被災した後の被害規模を予測する評価方法。}による被害の予測結果に依存しすぎて予測の不確実性が考慮できていなかったこと,地質条件や地形に合わせた避難の仕方が未記載だったことが2016年に明らかとなった[10]。特に,地震や津波のハザードマップは災害像を予想しにくいため,発生源や断層\footnote[3]{地震の予測において,どこで大地震が発生するのか把握する基準となる地層[5][11]。},地域防災単位,過去に発生した地震の情報等の表記が必要である。また,行政や非営利団体による斡旋が上手く行かず,ハザードマップの認知度が極めて低いという問題点もある。 \subsection{既存のハザードマップの問題点} \begin{enumerate} \item 予想が難しい \par @@ -94,7 +94,7 @@ \begin{itemize} \item バリアフリー対応 \par 「情報機器が扱いにくい人」とは高齢者を含めた情報機器を扱うことに難がある人と表すことにする。彼らはインターネットやスマートフォンなどの情報機器を扱うのが難しいが,大多数は紙媒体を扱うことが可能である。 - 紙媒体の地図であれば役所に行けば入手することができる。また,インターネット上でも印刷することができる。しかし,役所に行く方法が無かったり,印刷の方法が分からない場合もある。そこで,印刷機能を実装し,なおかつ簡単な表記と、印刷方法が書かれた説明書を利用者の閲覧が容易な場所に貼り付ければ,紙媒体のハザードマップの浸透に繋げることができると考える。しかし,視覚障害者には,ハザードマップを扱うことができないため,音声による解説機能を実装する必要がある。 + 紙媒体の地図であれば役所に行けば入手することができる。また,インターネット上でも印刷することができる。しかし,役所に行く方法が無かったり,印刷の方法が分からない場合もある。そこで,印刷機能を実装し,なおかつ簡単な表記と,印刷方法が書かれた説明書を利用者の閲覧が容易な場所に貼り付ければ,紙媒体のハザードマップの浸透に繋げることができると考える。しかし,視覚障害者には,ハザードマップを扱うことができないため,音声による解説機能を実装する必要がある。 \item 夏や冬の避難情報 \par 山形県は夏と冬の環境の差が激しい地域である[17]。とりわけ酒田市は夏場は40度近くの気温,冬場は海岸からの強い風があり,路面も凍結するため危険な場所となる。そこで,冷房や暖房を備えた避難所を切り替えることができる機能が実装されたハザードマップを作成する必要があると考える。 \end{itemize} @@ -165,7 +165,7 @@ \item ポリゴン \par 津波や最上川の洪水がどの周域まで及ぶかを表示するのに用いている。ここではポリゴンが使われており,ポリゴンは,Leaflet上に多角形を描画するオブジェクトの一種である。描画には各地点の緯度経度を配列として指定する。L.pollygonオブジェクトを用いて生成したコードを表示するには,add Toコマンドで追加する必要がある。本研究では津波到達範囲の可視化に使用されている。 \end{itemize} -本研究のマーカー及びポリゴンには国土交通省のハザードマップデータを用いている。国土交通省の地図を用いるメリットは2つある。1つ目は毎年最新の情報を地図内に載せられるため正確性が高いハザードマップを作ることができるということである。また,2つ目は行政の地図であるため、引用元を記載しておけば無償で引用することができるということが挙げられる。 +本研究のマーカー及びポリゴンには国土交通省のハザードマップデータを用いている。国土交通省の地図を用いるメリットは2つある。1つ目は毎年最新の情報を地図内に載せられるため正確性が高いハザードマップを作ることができるということである。また,2つ目は行政の地図であるため,引用元を記載しておけば無償で引用することができるということが挙げられる。 \subsection{Leaflet-omnivore} Leaflet-omnivore\footnote[12]{Leafletと組み合わせることを前提に作られたJavaScriptライブラリで,外部のJavaScriptオブジェクトを読み込むことに用いられている。}を用いて外部の地図データを自分の地図データとして用いる。外部のデータはShapefileとよばれる状態でダウンロードされることが多いため,KMLファイルに直す必要がある。これはLeaflet-omnivoreがKMLファイルを読み込むことができるという性質による。 \section{位置情報読み込み機能} @@ -268,7 +268,7 @@ 本研究では範囲を酒田市のみと定めてハザードマップを作成したが,山形県全域を含めたハザードマップを作成していきたいと考えている。特に内陸では火災や土砂災害が二次災害として発生する傾向にあるのでこれらを考慮したマップを作成することを考えている。また,今回使用した位置情報読み取り機能は自然災害だけでなく,行方不明者を捜索する際に,スマートフォン等に埋め込むことによって行方不明者を軽減することができると考えられる。行方不明者の中にも,スマートフォンを所持している可能性があるため,彼らの捜索にも活かされるだろうと考えられる。 \section{作成物紹介} -ハザードマップは使われないと意味がない。そこでGitHub\footnote[15]{Gitを利用したバージョン管理のWebサービスのこと。バージョン管理とはプロジェクトの中で作成された作成物の更新・変更履歴をすべて記録する管理方法のことである。}に本研究のシステムを登録し,公開することとした。下のURLを各情報端末のURL欄に入力すれば地図が表示される。ページを開いてすぐ位置情報を読み込むか否かを問われるので,「はい」を入力すれば位置情報の読み込みが可能となる。 +ハザードマップは使われないと意味がない。そこでGitHub\footnote[15]{Gitを利用したバージョン管理のWebサービスのこと。バージョン管理とはプロジェクトの中で作成された作成物の更新・変更履歴をすべて記録する管理方法のことである。}に本研究のシステムを登録し,公開することとした。下のURLを各情報端末のURL欄に入力すれば地図が表示される。ページを開いてすぐ位置情報を読み込むか否かを問われるので,「はい」を入力すれば位置情報の読み込みが可能となる。 \section{本研究のURLとQRコード} \begin{center} \begin{figure}[htp]