\documentclass[a4j,twocolumn]{jarticle} %\documentclass{jarticle} \usepackage[dvipdfmx]{color} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \thispagestyle{empty} \addtolength{\topmargin}{-2cm} \addtolength{\textheight}{3cm} \addtolength{\textwidth}{1cm} \addtolength{\oddsidemargin}{-0.5cm} \addtolength{\evensidemargin}{0.5cm} \usepackage{ulem,color,graphicx,eclbkbox} \usepackage{showkeys} \usepackage{multicol} \usepackage{listings} \usepackage{url} \title{季節変化に対応したGPS読み取り機能付き\\Webハザードマップについての研究} \author{広瀬研究室 4年 C1160416 小野寺寛之 \\ } \date{} \begin{document} \twocolumn[ \maketitle \begin{flushleft} \abstract ハザードマップとは,災害(hazard)が発生した際に想定される災害の規模を表した地図である。しかし,地域の環境に見合ったハザードマップは存在しない。そこで本研究では環境や季節の変化に見合ったハザードマップを作成し,社会的意義を見出すことを目的としている。 \end{flushleft} ] \section{目的} 従来のWebハザードマップは自然災害のリスクを予測できるが,完全に予測して回避,抑制することはできない。しかも季節変化が激しいため夏や冬の厳しい環境下で巨大地震が発生した場合,多くの人々が苦境に立たされる可能性がある[1]。そこで季節変化によって避難場所を切り替えるハザードマップがあれば解決できると考えた。 \section{既存のハザードマップの問題点} ハザードマップは東日本大震災以降に大幅な見直しがなされたが,地質条件や地形に合わせた避難の仕方が未記載だったことが2016年に明らかとなった。また,行政や非営利団体による促進が上手く行かず,ハザードマップの認知度が極めて低いという問題点もある。 \begin{itemize} \item 予想が難しい \par 自然災害が相手であるため,規模や被害状況,どこで発生するかを明確に特定しにくく,対策が難しい。そのため,事前の情報を明記することができず,被害が大きくなる。 \item 見落としがある \par これは2016年に発生した熊本地震での事例である。熊本地震では,西原村と益城町では震度7を記録した。しかし行政のハザードマップにはこの二つが震央の上にあることが明記されておらず,対策もできずに被害を被ってしまった[2]。 \item 関心が薄い \par ハザードマップは防災訓練や,実際に発生した場合以外は使用頻度が少ないので,主に若い年代層の認知度は低いと見られている。また,実際に地震が発生して無事だった場合,災害規模を自分勝手な判断で分析し,安心してしまう住民もいる[3]。 \end{itemize} \section{先行のサービス} 本研究と同じくハザードマップの作成を行っている先行のサービスと本研究の比較を行う。 \begin{itemize} \item 酒田市のハザードマップ \par 酒田市役所では,洪水や津波のハザードマップの他に,地震の震度の予想分布図を表した「ゆれやすさマップ\footnote[4]{\url{https://www.city.sakata.lg.jp/jyutaku/jyutaku/taishin/taishinkaisyukeikaku.files/yureyasusa-map-sakata-A3print.pdf}}」を作成している。しかし,作成費用がかさむことと,「浸水想定地域\footnote[5]{あらかじめダメージを被るであろう地域}」は対象外であるため,未記載の地域もある可能性がある。 \item Google Map \par Google社\footnote[6]{Google crisis Map https://google.org/crisismap/japan}では「防災マップ」「災害情報マップ」を提供している。GPSやポリゴンを用いた震度分けのほか,高速で柔軟性のあるGoogle Map APIをソースとして利用しているため,ハザードマップの中では高い技術を誇っている。 \item Yahoo!ハザードマップ \par Yahoo!JAPAN\footnote[7]{大雨警戒レベルマップ \url{https://weather.yahoo.co.jp/weather/levelmap/?dosha=on}}では,インターネット上でリアルタイムの災害情報を掲示しているほか,レーダーによる雨雲の様子を表示できたりしている。地震の他にも高潮や火山噴火を含む8つの災害のハザードマップを展開しているが,季節による避難所の表示はない。 \item 株式会社ゼンリンのハザードマップ \par 株式会社ゼンリン\footnote[8]{株式会社ゼンリン \url{https://www.zenrin.co.jp/product/category/planningmap/hazardmap/index.html}}では、一つのハザードに特化した詳細なハザードマップを作成している。冊子ではなく,1枚の地図として作成することもできる。 \end{itemize} \section{提案} 背景と目的をふまえ,季節変化による地震災害のリスクを軽減することを目的としたWebハザードマップを作成する。そこで,思案したアイデアを大きく5つに分けて説明する。ベースとなる地図は国土交通省の地図を用い,環境と地形に見合った地図を作成する。 国土交通省のハザードマップは過去のデータと科学的な知見をもとに作成されているため,信頼性が高い。 \begin{itemize} \item 高齢者にも優しい設計 \par 高齢者や視力が弱い人が扱うことを考慮し,文字を大きく表示させる。また,スマートフォンなどの情報機器が扱えない人や,災害時の停電で活用されることも考慮し,印刷機能を実装する。 \item 避難所の場所を特定するのが簡単にできる機能 \par 避難所や危険区域の場所が分からない,住所を理解できてもそれを調べる方法が分からないなどの問題を解決できる機能を実装し,利便性の向上を追求する。また,幅広い年齢層の人が見ることを想定して津波や洪水,土砂災害地域,避難所をマーカーで表す。 \item 季節ごとに避難所を切り替えることができる機能 \par 酒田市を含む山形県は夏と冬の季節の差が激しく,秋には台風や大雨が降る。このような状況で地震が発生した場合を想定して,避難所を切り替える機能を実装する。 \item 初心者にも簡単に理解できる解説書 \par ハザードマップの見方を詳細に載せているサービスは存在しない。そこで,ハザードマップの使用方法を載せた解説書を同梱し,Webページ内では先に解説書を読むことを促進させる。解説書を理解することで本研究以外のハザードマップを利用する際にも応用できる内容にする。 \end{itemize} \section{構成} 本研究のシステムを構成している構成要素について解説する。 \subsection{構成要素} プログラミング言語にはJavaScript,マークアップ言語にはHTML5を用いる。 また,背景を整えるためCSS3も用いる。 \subsection{主要JavaScriptライブラリ} \begin{itemize} \item Leaflet \par JavaScriptのライブラリの一種であり,Web上にタイルベースの地図データを表示することができる。また,このライブラリを研究に選んだ理由としては,OpenLayersに比べサイズが軽く,幅広い編集ができることが挙げられる。 \item jQuery \par JavaScriptライブラリの一種で,Web上で動的な要素を加えるのに用いられる。企業のWebページ上で動的な効果が入っているページに多く使われている。本研究では,マーカーの切り替えに使用した。 \end{itemize} \section{本システムの機能の紹介} 本研究のシステムの機能について説明する。 \subsection{位置情報読み込み機能} 位置情報とは,携帯端末等で利用者が所在する現在地を取得した情報のことである。本研究のハザードマップにはGPSを通して位置情報を取得するサービスが備わっており,図3.3では「現在地」と表示しているマーカーが現在地を表している(図1)。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.2]{gps.png} \caption{GPSで現在地を示している使用例} \end{figure} \end{center} \subsection{印刷機能} 計算機で扱う際に情報を簡単に印刷できるように,JavaScriptで書き込んで作成した印刷機能を実装した。 %\begin{center} % \begin{figure}[htp] % \includegraphics[clip,scale=0.5]{print4.png} % \caption{キャプチャ機能を用いた印刷機能の例。} % \end{figure} %\end{center} \subsection{緯度経度表示機能} 避難所や危険区域の位置がどこであるかを調べるために実装している。位置座標の表示にはlatlngクラスを用いている。latは緯度,lngは経度を表している(図2)。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.2]{capture.png} \caption{latlngを用いた座標を示す機能を用いた例。} \end{figure} \end{center} \subsection{津波到達予想範囲の可視化} 津波到達範囲を可視化にはポリゴンを用いる。国土交通省から抽出されたデータはuMap\footnote[14]{二次使用や改変,再頒布について無制限に使用してよいという許諾を得たオープンソースライセンスを受けたレイヤー付きマップを埋め込むためのオープンソースソフトウェアのことである。}を通してOpenStreetMapのデータに変換して表示している(図3)。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.2]{newmap2.png} \caption{leaflet機能の一つ,pollygonを用いて色分けをした例} \end{figure} \end{center} \subsection{避難所の位置の可視化} 酒田市内にある,地震あるいは地震によって引き起こされる二次災害からの避難を目的とした場所や施設をマーカーで表している。本研究では夏と冬の避難所マーカーを切り替えるシステムに用いられている(図4)。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.2]{marker.png} \caption{マーカーで避難所を表している。色によって避難所の危険度が表される。} \end{figure} \end{center} \section{スマートフォンへの対応} スマートフォンを扱う人のために,スマートフォン向けの画面に設定する。スマートフォンは幅が小さいので,幅に合わせると文字が小さくなるが,計算機での表示と同じ見栄えを保つことが可能となる。 \subsection{文字の大きさ} 情報機器を扱うことが難しい使用者でも扱えることを考慮し,文字の大きさを大きめに設定する。。 \section{考察} \subsection{考察} ハザードマップは避難活動を助けるツールであるため,使用者の視点にならないと評価がやりづらい。そこで,10人を被験者として,作成したハザードマップを評価してもらう。スマートフォンの使用が分からない人には,計算機を用いて実験を行った。 \subsection{実験方法} 実際に地震が発生したことを想定して実験を行う。想定した地震は「震央が山形県沖北緯38.6度,東経139.5度,最大震度7,震源の深さは14km,津波の高さおよそ2m」とする。被験者には実際に本研究のシステムのURLを入力,あるいはQRコードを読み取ってもらい,5分ほど使用させ,評価と意見を言ってもらうという方法を取った。 \subsection{実験結果} これらの意見を元にグラフを作成したので,このグラフを使って本研究のよい点と足りない点を説明する(図6.1)。 また,この実験で得られた評価は以下に示すこととする。 \subsection{よい点} \begin{itemize} \item[1]津波到達範囲が表示されており,避難所を見分けることができる \item[2]津波や土砂災害が発生する可能性のある避難所を見分けられる \item[3]動きが快適で使いやすい \end{itemize} \subsection{工夫したほうが良い点} \begin{itemize} \item[1]マーカーがどこにあるのかが分からない \item[2]文字が小さくて閲覧が難しい \item[3]わかりやすい解説書がほしい \item[4]スマートフォン対応ができていない \end{itemize} 評価で一番多かったのが「津波到達範囲の表示がされており,避難所を見分けることができる」だった。意見では,「マーカーがどこにあるのかがわからない」が多かった。 \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.3]{grafbar.png} \caption{被験者の感想を棒グラフとして表す} \end{figure} \end{center} \section{結論} \subsection{本研究の結論} 本論では,巨大地震に対する庄内地域の現状とハザードマップの問題点を正確に受け止め,バリアフリーで,庄内の季節変化に合わせたサービスを提供するために,季節変化に対応したGPS読み取り機能付きWebハザードマップを作成した。本システムには,ハザードマップ特有のマーカー切り替えと位置情報読み取り機能を最大限に発揮して,スムーズで安全な避難を促す余地が十分にある。そのためには,まず,既存の紙媒体やWeb上のハザードマップの情報を鵜呑みにせず,しっかりとその地域に見合った環境,地形,歴史,地質を理解し,地震大国日本でどのように 生活していくのかを考えることが重要である。 本システムがハザードマップとしての利用価値を認められた際には,このような視点から取り組み,信頼性と安全性を向上させるために貢献する所存である。 \subsection{今後の展望} 本研究では範囲を酒田市のみと定めてハザードマップを作成したが,山形県全域を含めたハザードマップを作成していきたいと考えている。特に内陸では火災や土砂災害が二次災害として発生する傾向にあるのでこれらを考慮したマップを作成することを考えている。 \section{本研究のURLとQRコード} \begin{center} \begin{figure}[htp] \includegraphics[clip,scale=0.5]{qrcord.png} \caption{図6:WebハザードマップのQRコード} \end{figure} \end{center} \vspace{-10pt} \url{https://koeki-soturon.github.io/hazard-map/map.html} \begin{thebibliography}{99} \bibitem[1] 地震調査研究推進本部(2019)「山形県の地震活動の特徴」,地震本部, \url{https://www.jishin.go.jp/regional-seismicity/rs-tohoku/p06-yamagata}(参照2019-11-01). \bibitem[2] 鈴木 康弘(2018)「科学研究費助成事業 研究成果報告書」,名古屋大学,pp.3, \url{https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-15H02959/15H02959seika.pdf}(参照2019-12-31). \bibitem[3] 阪本真由美(2015)「避難所の確保と質の向上に関する検討会 東日本大震災における避難所の状況」,名古屋大学減災連携研究センター, pp.1-16, \url{ http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanzyokakuho/02/pdf/siryo2.pdf}. \end{thebibliography} \end{document}